やがて海へと届く(彩瀬まる)

東日本大震災で友人を亡くした主人公の喪失と再生を書いた物語。

旅先で東日本大震災に遭い、後に「暗い夜、星を数えて 3・11被災鉄道からの脱出東日本大震災」を記した彩瀬さんが書かれた、というのがね、なんかね、胸にズズンときました。本当は、そういう予備知識を持たずに読んだ方が良いのかなと思う気持ちもあるにはありますが、”知ってる”んだから、こればっかりはしょうがない。


地震の前日、同棲していた遠野くんに「最近忙しかったから、ちょっと息抜きに出かけてくるね」と伝えたまま行方がわからなくなったすみれ。あれから三年。すみれの友人だった真奈は、遠野くんからすみれと住んでいた部屋を引き払い、すみれの荷物を処分すると告げられる。すみれを亡きものとして扱う遠野くんに反発を覚える真奈だったが・・・。

たまたまだったんだけど、3月10日に読了という、すごいタイミングで読んでしまった。読み始める前に、どうしようかなと少し迷ったんだけど、このタイミングで読んで良かったと思いました。
・・・という言い方をしていいのかどうか、分からないけれど。


三年って短いようで長い。長いようで短い。その感じ方は人それぞれ。遺体が見つかったのならまだしも、行方不明のままなら、気持ちの整理もなかなかつかないのも分かる。遺体が見つかっていても、その死を受け入れられないことだってあるだろう。だから、真奈のことも遠野くんのことも、どちらも、そうなんだろうと思える。でも、それぞれの立場からしたら、「もういいかげんに・・・」と思うこともあるだろうし、「どうしてそんなことが・・・」と思ってしまうんだろうなぁと、ホント切ないなぁと思いながら読みました。

どっちが正しいとか、それは違うと思う、とは言えない。でも、生きるってことは前に進むってこと。すみれがいない時間がどんどん長くなり、自分だけが進んでいくということには、様々な思いや葛藤があるだろうけど、真奈には自分を大切に歩んで欲しい、読み進めるほどにそういう思いが募りました。なので、ラストには、あ~良かったなぁとホッとしました。

まぁ、そのラストの前に、衝撃的な展開があって驚いたけど。いやいや、ここでそういう試練はやめてよー!と思わずつぶやいてしまった。それがあったからこそ、あのラストを迎えられたのかもしれないけどね。

生きている人だけじゃなく、すみれのことも描いてあって、それも、なんというかね、上手く言えないけれど、読んでる立場として、ホッとしたというかね、なんでしょう、救われた、というのかな、そんな思いになりました。
うん、良かった。




(2016.03.10 読了)





やがて海へと届く
講談社
彩瀬 まる

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この記事へのコメント

苗坊
2016年04月10日 12:43
こんにちは。
東日本大震災を経験された著者さんだからこそ書ける作品だったと思います。
突然大切な人がいなくなったら、自分はどう思うのだろうと考えさせられました。
遠野くんの考えも、すみれのお母さんの考えも真奈の考えも間違ってはいないと思うんです。捉え方は人それぞれだと思うので。でも最初の頃の真奈は自分が生きていることに悩んでいるようで読んでいて辛かったです。そう考えていてもすみれはきっと喜んでくれないよなんて思ったりして。
正解はきっとないのだと思いますが、こうして考えるきっかけを与えてくれて、この作品を読んでよかったなぁと思いました。
すずな
2016年04月11日 12:44
>苗坊さん
そうですね。私も震災を経験された彩瀬さんだからこそ書けた作品だったんだろうと思いました。
そして、誰かの死をどう捉えるのかは千差万別なのだろうと思うので、苗坊さんと同じように、正解はないのだろうなぁと思いました。私ならどうだろう、ということは、私も読みながらずっと考えてました。答えはなかなか出なくていろいろと考えてしまいますが、この作品を読めて良かったとは思いました。

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