冷血(上・下)(高村薫)

久しぶりの高村さん。「レディ・ジョーカー」以来なので、このブログを開設してからは初めてです。
・・・って、そんなに読んでなかったのかぁとちょっとビックリしました。高村作品は図書館の予約に出遅れてばっかりで、なかなか読めなかったんだよね;;;でも、今回は合田雄一郎シリーズだと知って、出遅れたなぁ;;;と思いつつも予約を入れてみたのでした。そしたら、その前の「太陽を曳く馬」もこのシリーズ作品だったらしいと知って、ちょっとショックを受けてみたり。太陽~は”「晴子情歌」「新リア王」と合わせて三部作”ってどこかで読んだような気がするんだけどなぁ・・・。勘違いだったのかな。近いうちに読まなくちゃ!


クリスマス前夜に起こった歯科医師一家4人殺害事件。事件が起こる前の犯人の行動と、歯科医師一家の生活の様子。そして、事件発生後の警察の捜査、犯人確保、取り調べから公判までが上下巻の2冊で描かれている。

久々の高村作品ということで、最初は「こんな文体だったかなぁ」と思いつつの読書となりました。とはいえ、すぐに慣れて没頭出来たんだけどね。でも、上巻は、とにかく本題であるはずの一家殺害事件までが長くってねぇ・・・。まだ事件に辿り着かないの!?と焦れまくりでした。犯人達の行き当たりばったりの行動に呆れつつ、その無計画で衝動のままに行動する2人に、ある種の恐さを感じたりもしました。

そして、殺害される歯科医師一家の様子が中学生の娘目線で語れるんですよね。「幸せな一家」という印象の彼らに、じわじわと犯人達が近づいていく。それに気付かず、日常生活を続ける一家。それらが交互に語られて、じわりじわりと緊張感が増えていく感じが恐かった。
・・・まぁ、先にも書いたように、その記述が結構長くって、焦れたりはしたんだけど(笑)


事件後は、雄一郎たち警察目線で語られ始めると、犯人達の慎重さに欠けた行動や無計画さがますます顕わになるんだけど、だからこそ、なかなか犯人に辿り着けないという捜査の大変さも実感できたのでした。ちょっとしたことから犯人に近づいていく様は、小説というよりもドキュメンタリーを読んでるような、そんな気持ちにもなりました。

そして、犯人確保。動機の解明と殺意の有無。一家殺害に到るまでの犯人の言動を読んできた読者としては、「んなもん、ないよねー」と思ってしまうんだけど、警察や検察としてはそういう訳にはいかないんですね。それなりの言葉(感情)を引っ張り出さなければならない。難しいもんだなぁ。・・・って言葉でしか語れない自分のボキャブラリーに貧困さに凹みますが;;;まさに「なんとなく」なことを、誰もがそれなりに納得できるようなというか、理解出来るような言葉にしなければならないって、ハッキリって「無理」って思っちゃうんだけど。「無理」って言えない立場ってシンドイなぁと、そんなことを思ったのでした。


あとですね、犯人達によって事件当日の様子が語られるんだけど、その前に彼ら一家の日常の様子が綴られていたので、「あの子達がそんな風に・・・」という感情が渦巻いてしまって、なかなか冷静に読めなかった。そして、これが他人事じゃなく、いつ自分の身に降りかかってもおかしくないという恐さも感じたのでした。


現実でも起こっている無差別殺人事件。犯人の動機と殺意って、本当はどれくらいのものなんでしょう。果たして、それらがあったのかどうかすら分からないと思うと、心底ゾッとしてしまいます。





上巻
・事件
・警察

下巻
・個々の生、または死



(2013.02.22読了)





冷血(上)
毎日新聞社
高村 薫

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冷血(下)
毎日新聞社
高村 薫

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この記事へのコメント

2013年03月08日 12:41
すずなさん こんにちは
言葉の無力感というか、愛想のなさというか、そんなことを感じる小説でしたね。
ちなみに「太陽を曳く馬」はご指摘の通り、「晴子情歌」「新リア王」に続く福澤一族三部、
でありながら、合田シリーズの片隅にある作品でもあります 笑
すずな
2013年03月11日 12:48
>yoriさん
そうそう。「言葉」の限界みたいなものを感じた作品でした。
あ~やっぱり三部作なんですねー;;;じゃぁ、晴子~からよまなくては!…今年中に読めればいいなぁ^^;

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