笑うハーレキン(道尾秀介)

讀賣新聞夕刊連載の長編。ホームレスとなった元家具会社社長と、ホームレス仲間たちの物語。

・・・って書くと、”愉快なコメディ”みたいな印象になっちゃうなぁと自分で書いてて思ってしまった(笑)実際は、かなり重いお話。一人息子を亡くした後、会社が倒産し、妻とも離婚した男の後悔や葛藤、そして、再生への道のりを描いた物語って感じかな。

スクラップ置き場に身を寄せ、軽トラックで寝泊りしながらも、家具職人としての腕があったお陰で「家具修理」の仕事で日銭を稼ぎながらなんとか糊口を凌いでいる東口。時には、同じスクラップ置き場のホームレス仲間であるチュウさん、トキコさん、モクさん、ジジタキさんらと助け合いながら暮らしている。そんな東口の元に、若い女が飛び込んできて・・・。


まず、東口にだけしか見えない疫病神の老人という存在が不気味というか・・・。これは、ホラーなのか、それともファンタジー系なのかな?と思いつつ、それ以外では本当にリアルで現実的な物語として話が進んでいくんですよね。この老人の正体が気になりつつも、物語は進んでいく。家具会社の社長という立場だった東口が、社会の底辺であるホームレスとして暮らす日々への複雑な心境や、息子を亡くし、家族を失った悲しみなど、文章の端々から漂ってきて重苦しい気持ちになりました。

特に、生前の息子の姿を映したビデオを音声を消したままで見ている東口は、その姿を想像するだけで堪らない気持ちになりました。このビデオなんだけど、音声を消して見ていたのには、ちゃんと理由があったということが後半になって明かされるんですよね。それが判ったときの衝撃は、もうね、かなりのものがありました。東口は、どんな思いでこのビデオを見ていたのか・・・。それこそ、鉛を飲み込んだようなという表現がぴったりくるような、そんな気持ちになってしまいます。

後半は、「どうなのよ?」とちょっと突っ込みたくなるくらいのご都合主義の展開になってしまうんだけど、まぁ、それはそれで面白かったからいいかな(笑)そんなに上手くいくはずがないでしょー!と思いつつ、なんていうかね、そのイキオイに押されちゃったというかね、まぁ、そんな感じですね。

・・・道尾さんには、ちょっと甘いという自覚はあります、はい(笑)



内容的には、謎の女性やホームレス仲間の突然の死など、ちょっとミステリーっぽさもありますが、そこまでミステリーな訳ではないんですよね。疫病神の老人の存在とかはホラーっぽさもありつつ、最後まで読むと文芸作品かなと思える感じ。道尾作品の最近の傾向はこんな風だって分かってはいるんだけど、どうしても「最後にあっといわせる展開」を期待しちゃってる自分がいます。この作品も、これはこれで楽しめたんだけど、なんだかちょっぴりの物足りなさは残るなぁというのが正直なところです。

あ、面白かったんですよ!ホントのホントに。・・・って、力説するとうそ臭くなっちゃいますが(笑)
最後に東口が奈々恵に語った未来がきっとくると希望の持てるラストであったのも嬉しかった。重苦しい内容ではありましたが、最後は爽やかさも感じられる物語でした。



(2013.02.14読了)




笑うハーレキン
中央公論新社
道尾 秀介

Amazonアソシエイト by 笑うハーレキン の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


この記事へのコメント

この記事へのトラックバック

  • 誰もが道化師を

    Excerpt: 小説「笑うハーレキン」を読みました。 著者は 道尾 秀介 久々の道尾作品です 今作はというと・・・ ずっしり重い系できなく、コミカルな感じもありながら ドラマもある 最近では、カササギに近い感じ.. Weblog: 笑う社会人の生活 racked: 2014-06-21 00:24