空飛ぶ広報室(有川浩)

泣いた、泣いた、泣きまくったーっ!
・・・と、今回の有川さんの新刊は泣きのツボを押されまくった長編でした。

発売日に入手していたのに、オリンピック観戦や図書館本の返却期限の関係でようやく読めたのはお盆休みに入ってからでした。早く読みたくってしょうがなかったけれど、有川作品は一気に読みたい!と思っているので、オリンピック観戦の合間になんて読めないし、手にした新刊は思った以上に分厚かったしで、我慢に我慢を重ねた結果が、発売から2週間以上後の読書となったのでした。

・・・前置き長すぎ;;;


有川さんの久々の自衛隊物は航空自衛隊が舞台。とはいえ、舞台は広報室なので塩やら空に浮ぶ謎の物体やら巨大ザリガニやらとの攻防がある訳でない(笑)今回、相手にするのは世間の目。偏見を含めた厳しい世間の目。自衛隊員である彼らにとって、今まで読んだ有川作品の中で一番の強敵だったのかもしれないなぁ・・・。

そして、不慮の事故で戦闘機パイロットから広報室勤務となった空井と、記者からADに異動させられた稲葉。夢を絶たれた二人が新たな職場でどう変わっていくのかという、成長物語でもありました。男女二人の出逢いから始まるとなれば、有川作品に付き物のラブ要素も期待しちゃうところなんだけど、今回は甘味が少々控えめなんですよね。この二人でヤキモキニマニマウヘウヘ出来る!と思ってると、ちょっと肩透かし感を味わってしまうかな。まぁ、多少は甘味成分もあったけど、帯の文章から期待して読むと「ちょっとね・・・;;;」となっちゃいます。

最初は稲葉の自衛隊に対する偏見が強烈過ぎて引いてしまう。・・・が、よーく考えると有川作品に出会う前の私だって、自衛隊に対しては彼女と似たり寄ったりの気持ちしか持ってなかったような気がするんだよねー。さすがに「殺人云々」とまでの思いはなかったけど。それが、有川作品に出会って自衛隊に対する気持ちが少しずつ変わってきたような気がします。災害が起こった時の彼らの活躍ぶりや、その他の活動状況なども報道等で目にする事が多くなったような気がするし。きっとそれは、以前よりも自衛隊に対する自分の関心が深くなったということなんだろうなぁ。有川さんを通じて、ね。・・・ってことは、私的に有川さんは作家兼自衛隊広報室分室勤務って感じなんだなぁ(笑)

それにしても、広報室の面々の個性的なことと言ったら!ミーハー室長を始めとして、紅一点の柚木や、この作品でちゃーんとラブ要素を提供してくれた(笑)槙や、ベテラン広報官の比嘉、気儘な片山などなど。どの人物もなかなか強烈で良い味を出してくれましたね~。ただ、個人的には、比嘉についてもうちょっと突っ込んだ話が読みたかったかなとは思っちゃいましたけどね。・・・って、これだけのボリュームがあって、いろんなものがてんこ盛りの作品を読んだ後にこれだもん;;;ホント、読者の我が儘は尽きる事がありませんねぇ(笑)

空井と稲葉の挫折。特に空井の不慮の事故によるパイロット資格剥奪。片山の比嘉への思い。柚木の女性自衛官であるが故のアレコレと槙の想い。自衛隊CM撮影を発端とする出来事。そして、書き下ろし短編の「あの日の松島」まで。もうね、次々と、ホントに次々と目の前に繰り広げられるあれこれ。私に向かって「泣け、泣け、泣きまくれーっ」と煽りまくる有川さんの声が聞こるような気がしました(笑)いや、冗談じゃなくホントに。お陰で涙腺は緩みっ放し、鼻はずるずるでティッシュじゃ足りずにタオル片手に読みましたですよ。めちゃくちゃ泣きまくったなぁ・・・。次の日まで瞼に影響がありましたもん;;;お盆休み中で良かったと心底、思ったのでした。

泣きのツボもでしたが、笑いのツボもそれなりに満載で、泣きまくってる合間に、しっかりと笑わせてもらったりもしました。自衛隊各隊の標語とかね、各隊の特徴をよく知らない私にも分かりやすかったし、思わず爆笑しちゃったのでした。稲葉と柚木の飲み会での写真とかも見てみたかったなぁ・・・。

世間からの風当たりが強い自衛隊の広報室。そこで働く人々の苦労も計り知れないものがあるんだなぁと改めて感じたりもしました。とにかく、チャンスがあれば名前を売る、その為には多少の無理もやっちゃう。融通の利かなさではピカイチの組織の筈なのに、そこをなんとか通そうと頑張る姿が印象的でした。でも、思わぬところで批判を浴びてしまったりもして・・・。それに凹んだり傷ついたりする姿は、本当に普通の人間なんですよね。てか、人間として当たり前なんだよね。自衛隊員も同じ人間なんだ、ということを認知させることがどれだけ大変であるのか。ヒシヒシと感じたのでした。


・書き下ろし短編「あの日の松島」
東日本大震災で津波被害を受けた松島基地。これを書かないという選択肢は有川さんの中では無かったんでしょうね。これを書くために発売が1年延びたんだんだそう。新刊を待ち望んでいる私ですが、この短編を読むためだったら1年待たされた事なんて、なんてことないと思える。有川さんの思いと、その思いを汲んでくれた出版社の決断に頭が下がります。

もうね、最初から最後まで溢れる涙を止める事ができませんでした。「あなた達だって被災者なのに!」という言葉がぐるぐると頭の中で回り続けました。ちょうどその前に”あの日の松島”を追ったドキュメンタリー番組を見ていたことも大きかったんだと思います。読みながら番組で見た映像が思い起こされて・・・。支援物資を受け取らないというのにも驚きました。子供のおむつすら他の基地からのカンパで賄ったという話には驚きを禁じえなかった。自衛隊員の家族は民間人!思わず本に向かって言い募ってしまった。

この短編で、本編でどうにもならなかった空井と稲葉の関係がなんとかなるかと思ったんだけど、結局、二人の関係は微妙なまま。まぁ、このお話に甘味成分は注入出来ないよなぁと思うし、入ってたら逆に違和感を感じちゃうような気もするけどね。でも、有川作品ですからね;;;しょうがないとは思いつつ、納得もしつつ、それでももうちょっとだけでも・・・と思ってしまうのは許して欲しいなぁ。出来れば、文庫化の時にでも甘味成分てんこ盛りの書き下ろし短編を・・・と、我が儘読者の小さな希望をこっそり訴えてみるー(笑)





タイトルからも窺えますが、これまでの有川作品の中で自衛隊広報色が一番強い作品となりました。そういう部分が受け入れられない読者もいるだろうなぁと思いますが、個人的には「自衛隊員も普通の人」ということ、そして、「有事に対する覚悟が出来ている」ということを分かりやすい形で伝えてくれた作品となりました。
読めて良かった。



(2012.08.15読了)



空飛ぶ広報室
幻冬舎
有川 浩

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この記事へのコメント

2012年08月27日 12:01
こんにちは。この本、早く再読したいです。人に貸しているので……。
人によっては拒否反応を示すかもしれないけれども、改めて、自分自身が自衛隊に持っている印象や感情が変化したことを振り返ることができました。自衛隊広報室分室の広報の成果だと思います。笑
その分、自分が右傾化しすぎないよう(この社会情勢ですから)、バランスを保つことが難しく思ったりもしています。

自衛隊から見た震災の特集番組を私も見ましたが、改めて報道に乗せられなかった部分を、小説という体裁で感じることができたのもよかったです。
これも小説の持つ力かも。
すずな
2012年08月27日 12:58
>香桑ちゃん
私は妹に貸す前に再読してしまった^^;
自衛隊に対する印象は広報室分室のお陰で随分と変わったね。それもいいけど、香桑ちゃんの言う通り、右傾化しすぎないようにすることも大事だよね。このバランスが難しいけど^^;

うん。私も「あの日の松島」を小説という形で読めたことは本当に良かったと思いました。
べる
2012年08月31日 00:34
うわー・・・こんな素晴らしい記事に私のテンション低めの記事をTBするの勇気がいるなぁ・・・(><)。
『あの日の松島』は確かにぐっと来たんですけど・・・本編では私、全然泣けなかったです^^;なんか、有川さんに申し訳ない気がしてきました。
有川作品によって、自衛隊を好意的に見るようになった人は本当に多いと思います。そういう意味では、本当に貢献されてますよね。有川さん、もう、自衛隊広報室の一員って言っちゃっていいんじゃないですかねって思うくらいです(笑)。
すずな
2012年08月31日 12:50
>べるさん
と、とととんでもない!素晴しいのはこちらじゃなくって、べるさんの記事ですよぅ^^;
人それぞれの感想ってあるんですから、申し訳なく思う必要もないんじゃないかな~と思いますよー。
私も有川作品で自衛隊に対する感情が変わってきた一人です。組織や在り方については思うところもありますが、自衛隊員だから…という目で見ることは完全になくなりましたね。そういう意味でも、やっぱり有川さんは自衛隊広報室の一員でしょうか~(笑)
苗坊
2012年09月02日 22:52
こんばんは。
私もテンションが低めの記事だったのでカキコするのが申し訳ない感じですが^^;でもします。
面白さが少ないわけではもちろんないのですが、私も泣かなかったですねぇ。今回は結構自衛隊の専門書として読んでいたかもしれないです。
私は恋愛部分に関してはリカの最初の印象があまりにも強烈だったので^^;ベタ甘だったらきっと違和感を感じたかもしれないのでちょうどよかったかなって思いました。
すずな
2012年09月03日 12:44
>苗坊さん
私のテンションが高すぎなんですよーぅ^^;すみません;;;コメント&TBありがとうございますm(__)m

確かに専門書みたいな印象も受けてしまいますねぇ。タイトルからして自衛隊っ!って自己主張してましたもんね^^;
リカの最初の印象は強烈でしたもんねぇ。でも、やっぱり私はべた甘が欲しかったです~(笑)
2012年10月18日 21:16
すずなさん、こんばんは(^^)。
ようやっと読めました、『空飛ぶ広報室』。
携帯サイトでの連載中、なんでソフトバンクじゃなかったんだ~!と心の底から悔しがっておりました(笑)。
待ちに待っての単行本化、嬉しかったですねぇ。
今回、ホントに有川さんの「自衛隊広報室分室勤務」がしっくりきますね~♪とても深く取材したんだなぁって、感じました。
私も是非、文庫化の際はベタ甘展開の追加を!と願っています。
すずな
2012年10月22日 14:49
>水無月・Rさん
単行本化が待ち長かったですね~!でも、待っただけの事はありましたね。
有川さんが深く取材されたんだなぁと良く分かる作品でしたよね。
やっぱり、文庫化の際にはべた甘展開をお願いしたいですよね~(笑)
2015年02月08日 14:46
こんにちはー!私も目が溶けそうなくらい泣きました。。!笑
だって、ほんとに私の泣くどころのツボをおさえまくってて。。。;;
空井のあの真っ直ぐ強さをかっこいいと思う一方で、いつかぽっきり折れてしまうんじゃ。。なんてハラハラしたりもしましたが、物語がいい感じに進んでいってよかったです。
いろんな考え方の人がいるから、自衛隊も賛否両論ですよね。今でこそ震災時の活躍がみんなの脳裏にあるけど、海外で救援活動しただけでも叩く人はいますしね。
とはいえ、批判したりする前にちゃんと知っておく、という姿勢を持っていたいなぁと思いました。
あとは何気に柚木のエピソードでもほろほろ泣いたし、ほんとなぜか泣きまくりでした私、この本読んだ際。。。笑
すずな
2015年02月09日 05:34
>yocoさん
泣きのツボを押さえまくられたって感じですね~。という私も同じく押さえまくられたんですけどね(笑)エピソード毎に泣いてしまいました。
以前に比べると自衛隊への風当たりは随分と良くなったとは思いますけど、色んな考え方の人がいますからね。だからこそ、「ちゃんと知っておく」という姿勢は大事なんだと私も思います。
柚木のエピソードは私も泣きましたよー!!

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