起終点駅 ターミナル(桜木紫乃)

6編の短編集。

この著者の作品は、重苦しく暗く運命に翻弄されつづけるような主人公が多くって、読んでて負の感情で満たされる事が多い。でも、お腹にずんずんと寄せてくるモノがクセになっちゃうのか、新刊を見つけると、つい手に取ってしまっています。

この短編集も同じく、恋愛や仕事や家族関係で悩み、苦しみ、そして、そんな人生を独りで闘ってきた人ばかり。読んでいると、その運命の過酷さに読み進めるのがシンドクなったりもしました。彼らほどの試練ではないけれど、自分の人生のアレコレを思い浮かべ、つい感情移入しちゃたりもするからなんでしょうけどね。そして、そんな過酷な状況の中でも頑張って生きている彼らが迎える「生きていればいいことがある」という瞬間。そんな瞬間がラストに描いてあるので、シンドクても読んで良かったなぁとホッとできる。・・・まぁ、30年後とかっていうのには、正直、眩暈のようなものも感じるんだけど;;;

特に好きだったのは、ラスト2編の「たたかいにやぶれて咲けよ」と「潮風の家」かな。
「たたかいに~」は「海鳥の行方」と同じ、新聞記者の山岸里和が主人公。入社してすぐ上司のセクハラやパワハラに遭い、それでも慣れない仕事に必死に取り組む姿が痛々しい。プライベートでは、大学の同級生で就職してから疎遠になっていた彼が、赴任先で精神を病み実家に帰ってしまったりと、本当に公私の別なく困難が降りかかってくるって感じなんですよね。それでも、「新聞記者」という職業に必死に齧りついていく様子に、彼女の強さを感じました。凄いなぁ・・・と素直に思った。でも、その必死さが痛々しかったりもするんだけどね。新しい赴任先では、理解ある上司に恵まれ、未来が開けるような仕事に出会えますように・・・。願わずにはいられない。

「潮風の家」は、強盗殺人を犯した弟を持つ女性が30年ぶりに故郷に帰るというお話。・・・って、端折りすぎかな;;;自分の犯した罪でもないのに世間の目は冷たく、そんな目から逃れるように故郷を後にし、必死で生きてきた30年。30年ですよ!もうね、その月日を考えるとクラクラきちゃうんだけど。でも、その30年をずっと独りで頑張ってきた千鶴子って、本当に凄いなぁと思う。思うような幸せは手に入れることは出来なかったかもしれないけれど、それでも、周囲の人から差し伸べられる手はあった訳で。彼女の芯の強さや優しさが窺える。「強盗殺人犯の姉」というレッテルから逃れられるのかなと思えるラストに、どうか残りの人生を穏やかに送れますように、と祈る。


全体的に暗く重い作品ばかりで、ラストはちょっとだけ希望の窺えるものとはなっているものの、そこまでスカッとなるような読後感とは程遠い。気持ちが下降気味の時に読むと、浮上するのにちょっと気力を必要としそうだなぁ・・・。

でも、きっと、この著者の新刊が出たら手に取っちゃうんでしょうけどね(笑)新刊もだけど、既刊本も読みたいと思いつつ、なかなか読めないでいます;;;


・かたちないもの
・海鳥の行方
・起終点駅
・スクラップ・ロード
・たたかいにやぶれて咲けよ
・潮風の家


(2012.05.08読了)





起終点駅(ターミナル)
小学館
桜木 紫乃

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この記事へのコメント

苗坊
2012年05月17日 09:28
こんにちは。
桜木さんの作品はまだ3冊目なのですがどの作品もずしっときます。読んでいて辛くなる時もあるのですが、読む手が止まりません。
里和の回は私もとても印象深いです。
あんなに強く戦える里和は強いですね。弱い部分もありますがその弱さを人に見せない強さが羨ましくも感じます。
新しい赴任地でいろんな人に恵まれたら良いなと思います。
すずな
2012年05月18日 12:43
>苗坊さん
そうなんですよね。読んでて辛くなる時もあるのに、読むを止められないって感じですよねー。
里和の強さにただただ感服というか…凄いなぁと思いましたね。私も羨ましいと思いました。次の赴任地では上司を始め出会う人に恵まれるといいですね。
2012年06月09日 19:28
『ラブレス』で衝撃を受け、『凍原』でまた違う雰囲気。これが三つ目の作品です。つらい哀しいお話ばかりですが、6編ともやさしさがありました。でも現実にはこのような残酷な生き方は若い人にはすすめられません。
すずな
2012年06月11日 12:38
>よっちゃんさん
初めまして。
読んでてシンドイお話ばかりでしたが、たしかに優しさのある物語でしたね。まぁ、でもこんな生き方は、出来ればしたくないですね…。
「凍原」は未読なんです。近いうちに読みたいなぁ…と思ってるんですが、なかなか手が出せません;;;
2016年11月21日 15:53
すずなさん、こんにちは(^^)。
・・・やっぱり桜木さんの作品は、心が弱ってる時は読めませんよねぇ(^^;)。
北海道、しかも札幌などの栄えている街ではなく、少しうら寂れた感のある街で描かれる、孤独の物語は、確かに読んでいてしんどい気がしますよね…。
それでも、それがそれぞれが選んできた結果だからと受け入れて、粛々と生きて、そしてひっそりと死んでいくことに、胸が締め付けられるような気がしました。でも、彼らは不幸ではなかったかもしれません。
次の作品、何を読もうか思案中です。おすすめあったら、教えてくださいな。
すずな
2016年11月29日 12:56
>水無月・Rさん
桜木作品を読むにはかなりの気力を必要としますね・・・。なので自分がダメージを受けてる時は読めないですよね^_^;
それぞれが辛い立場にあって読んでいてかなりしんどいですが、それでも生きていこうとする彼らの姿が尊かったです。そうですね、不幸ではなかったのかもしれませんね。

おすすめですか!最近のは、精神的にちょっとキビシイかなぁと読んでないんですよねぇ^_^;なので、ピンとくるものがないのですが、「無垢の領域」はどうでしょう。かなり、ザワザワうわぁ;;;とする作品だった記憶がありますが^_^;

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