暗い夜、星を数えて 3・11被災鉄道からの脱出(彩瀬まる)

2011年3月11日に起こった東日本大震災。一人旅の途中、常磐線新地駅の車内で被災し、津波から逃れ、原発事故に怯えた5日間を記したルポルタージュ。

東日本大震災チャリティー同人誌「文芸あねもね」で知った作家さん。あの作家さんの中に実際に被災した方がいらっしゃると知った時には、本当に驚きました。そして、その体験を文章にまとめてあると知って、是非とも読んでみたい!と手に取りました。

自分の体験された震災や、その後、ボランティアとして参加した時の様子や感情が赤裸々に綴られている。そして、これが『作家さん』ということなんだな~とつくづく思った1冊でした。

駅の電車の中で大きな揺れに襲われ、津波から命からがら逃げ出し、そこで知り合った人の家で夜を明かした著者は、原発事故の恐怖にもさらされることになる。死を覚悟した福島での5日間を、余すことなく記しているという感じです。そこで感じた恐怖、情報が錯綜したり、入ってこない様子。不安、飢え、寒さなどなど、あの時に感じたり体験した事が、感情的にならず、そして誇張でもなく、あくまでも事実を事実として淡々と書き記したという印象。

だからこそなのか、著者と一緒に恐怖や不安を体験したような気持ちになりました。読みながら、恐怖に震え、不安に涙しました。あの時の揺れを全く感じなかった地域に住んでいる私。そんな私が「体験したような気持ちになった」なんてことを言うのは、実際に被災した方々に対して失礼にあたるのかもしれない。怒りを覚える方がいらっしゃるのかもしれない。それはもちろん、重々、承知しています。でも、著者の文章から伝わって来たものは本物だと思うんですよね。それが出来るからこそ『作家さん』なんだろうと思いました。

そして、揺れは感じなかったけれど、関東に住む友人達の安否を必死で確認し、その後、余震が起こる度に、彼女達の不安や恐怖を思い続けたあの日々を思い返すことになりました。実際に会って言葉を交わせない事へのもどかしさ、居ても立ってもいられない気分なのにPCを前に手をこまねいているだけで何も出来ない自分へのジレンマなどなど、それまではネット上で言葉を交わし、毎日、会っているような気分になっていたけれど、本当は会ってないんだぞ、気軽に会いに行けないほど「遠い」んだぞと、真実を突きつけられたような日々。それなりに、しんどかった。

でも、それって、本当に被災した人が感じたことに比べれば・・・。というか、比べる事すらおこがましいことだったんだと、そんなことにも気付かされました。


福島での5日間の後、埼玉に帰郷した著者は、その後、ボランティアとして、震災の日に出会った人々と再会する為に、何度か福島を訪れています。

その時に感じた恐怖と後ろめたさが、また赤裸々に綴られていて、胸を打つというか、胸に迫ってくる。その状況や感情、想いがリアルに伝わってくる。伝わりすぎて重い。あぁ、自分は被災地から本当に遠くにいるのだなぁ、被災してないのだなぁという当たり前の事に、改めて気付かされたような、そんな気持ちにもなりました。

「震災について知りたい」という思いから手に取った本ではないけれど、これを読めて本当に良かったと思いました。
どうか、沢山の人に読まれますように・・・。心から願う。



(2012.04.15読了)





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**こっそり?追記**
被災地ナンバーの車で・・・という記述を読んで、「あ~やっぱりあるんだ。」と苦い思いが湧きあがってきた。2年前のことを思い出した。変わらないんだなぁと何ともいえない気持ちになった。と同時に、あの頃の何とも言えない閉塞感や諦念感みたいなものが甦ってきた。あまり思い出したくなかったなぁ。。。

この記事へのコメント

2012年04月28日 10:40
了解。読んでみますです。
もろもろの後になっちゃうけど……。(^^;;
すずな
2012年04月29日 07:14
>香桑ちゃん
え。
い、いや、別に無理に読まなくてもー;;;結構、重い作品だしね^^;
2012年05月22日 16:52
読みました。読んでよかったです。
この人は、本当によくもここまで書いたものだと思うけれども、書かずにいられなかったんだろうとも思いました。
書き下ろす作業が、少しでも胸をなでおろす作業になっていればいいな。
災害そのもののひどさもだけど、その後の人が追い討ちをかけるひどさのほうが、気持ちがささくれるね。
改めて、自分ができることを探していこうと思ったよ。
よい本を紹介してくれてありがとうございました。
すずな
2012年05月23日 16:20
>香桑ちゃん
そう言ってもらえてホッとした^^;
作家として書かずにはいられなかったんだろうね。
災害だけじゃなく、いわゆる”風評被害”も怖く、やりきれなさを感じてしまいます。
こちらこそ、読んでくれてありがとう。
苗坊
2014年03月25日 23:50
こんばんは^^
私も雑誌に掲載されていたのを読んだのが最初でした。その時は地震に遭遇した時のことだけだったので、そのあと割と早い段階で被災地へボランティアに行かれていたのだと初めて知り、凄い方だなと思いました。
私は東北に知り合いはいないのでやはりどこか他人事のように観ていたのだとこの本を読んで改めて思いました。実際に遭われた方の話はやはり重いです。
そして私たちはあの地へ行かなければならないのだと感じました。いつになるかわかりませんが、絶対に行こうと思いました。
すずな
2014年03月26日 12:59
>苗坊さん
あんなに怖い思いをしたのに、すぐにボランティアに行かれたというのは、本当に凄いことだと思いますよね。

実際に遭われた方の話はリアルで重いですよね。
東北に知り合いもなく、東北から遠く離れた九州に住んでる私には窺い知れないものがありました。
私もいつになるのか分かりませんが、行きたいと思っています。

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