晴天の迷いクジラ(窪美澄)

うわー良かった!
著者デビュー作「ふがいない僕は空を見た」を読んでから、次作がとっても待ち遠しかった作家さんだったんですが、期待を裏切らない面白さというかね、心にじんわり沁みる作品でした。

勤める会社だけじゃなく自分も壊れかけている由人、その壊れかけた会社を経営している野乃花、そして、母親の過保護すぎる干渉を受けている高校生の正子。そんな壊れかけた3人が出逢い、行き着いたのは、湾の中に迷い込んだクジラで話題になっている南九州の海辺の町。弱っていくクジラを見ながら3人は…。

中盤までは、それぞれが少しずつ壊れていく様子が痛々しくって、読むのもなかなか気力が必要でした。みんな、形は違っていても重いものを背負っているのは同じで、その背負っている荷物に押しつぶされそうになっている。そして、3人ともが「死」を意識するまでになってしまうんだけど、そこで3人が向かったのは野々花の故郷であるクジラの迷い込んだ湾。

由人と野乃花が湾に向かっている途中で、家を飛び出した正子を拾い、3人で向かう事になったんだけど、その湾っていうのがねー!うわ、あそこじゃないですか!と断言してもいいくらいにシッカリ描写されてまして。重苦しかった空気がちょっとだけ軽くなったような、そんな気持ちになりました。・・・まぁ、これはね、その地域(の近く)に住んでいるものだから感じた事なんでしょうけど(笑)名物のカキ氷を食べ、地元民とおしゃべりをすると、その言葉遣いにまたまた反応!地元愛(と行っていいほど近くはないんだけど;;;でも気分的には地元だから!)を刺激するって言いましょうか、そんな感じでいちいちテンションがあがりました(笑)でも、方言を文章にするって難しいもんだなぁと、小説世界とは関係ないことをしみじみ思ったりもしました。話の流れに乗って読んでると、会話文で「ん?」とつまづくんですよね。で、もう一度イントネーションを変えて読み直して、「あ~、なるほど!」となるってことが何度もありました。

・・・って、話の筋から思いっきり逸れた;;;

で、目的地に着いた後からがねー!もうね、おばあちゃんと正子の会話に泣き、由人の「死ぬなよ。」に泣きと、涙腺を刺激されまくって泣いてばっかりでした。弱っていくクジラとの対比もまた効いていて、じわじわじわわわと心に沁みました。

人生には色んな事があって、大きな壁に突き当って途方にくれることもいっぱいあるけれど、とにかく生きていくことが大切なんだ。必死にならなくてもいい。そのままの自分でいい。肩の力を抜いて。そうすれば、何かが少しずつでも変わっていくし、変われるんだ、と。そんなようなことを思えました。

あ~なんだかね、この気持ちを上手く文章に出来ない自分がもどかしい。とにかく、すごーーく良いお話でした。



(2012.04.05読了)




晴天の迷いクジラ
新潮社
窪 美澄

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この記事へのコメント

2012年04月19日 21:44
とってもいいお話でしたね。
死なずに生きている、それだけで、価値のあることなのだと、肩の荷を下ろしたようなそんな気持ちになりました。
クジラのいたところのおばあちゃん、とっても温かみのある人でしたね。
すずな
2012年04月20日 12:41
>花さん
良かったですねー!
「生きている」ことが大事なんだというのが、ジーンと沁みて気持ちが軽くなりましたよね。
おばあちゃんは温かくってホッと出来ました。

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