炎路を行く者-守り人作品集-(上橋菜穂子)

タルシュ国の密偵アラユタン・ヒュウゴの少年時代と、女用心棒バルサの少女時代を描いた中編2編を収録した作品集。

「守り人シリーズ」が完結してからも、長編ではなくとも、こうやって彼らに会えるのはとっても嬉しい!発売を知り、嬉々として手に取りました。いや~どっちも良かったです。十五歳と言う大人になりかけの少年少女の焦り、鬱屈、葛藤、不安などなどが胸に迫ってきて、夢中で読みました。どちらも、大人になった二人があの頃を思い返し、未来を想うという構成になっていて、それも良かった。楽しかったし、グッときました。


・炎路の旅人
蒼路の旅人」でチャグムをさらったタルシュの鷹アラユタン・ヒュウゴの幼少時代のお話。彼が、自国を滅ぼした男に仕えることになったのかが描かれている。
家族を殺され、一人で生きていかなくてはならなくなったヒョウゴ。否応なく環境が変わり、それに戸惑う暇もないうちに必死で生きることになった彼の戸惑いと不安、そして、哀しみが胸に痛い。とにかく、目の前の事に必死で何かを考える余裕もない。そんな彼に「もっとしっかりせいよ!」なんて言える訳がないなぁ~と思った。こんな時は、ただただ見守るしか出来ないもんなんだなと、しみじみ感じました。
でも、そんな中でも、いくつかの出会いが彼を変えていく。「出会い」ってホントに大切だなということも改めて感じたのでした。


・十五の我には
ジグロと祖国を追われて街から街へと流離う日々の一片を描いた物語。バルサもまた、親を殺され、不安や焦りを感じながら生きていたんですよね。危険と隣り合わせで、ちょっとした油断が自信を危険へと晒してしまう。気の抜けない日々。でも、そんな中でのジグロの愛情がししみじみと沁みた作品でもありました。
作中で出てくる詩に思わず涙腺が・・・。ついつい泣いてしまった。


十五の我には 見えざりし、弓のゆがみと 矢のゆがみ、
二十の我の この目には、なんなく見える ふしぎさよ・・・・・・

歯噛みし、迷い、うちふるえ、暗い夜道を歩きおる、あの日の我に会えるなら、
五年の月日のふしぎさを 十五の我に 語りたや・・・・・・
(p277より)



この詩は、グッときたなぁ・・・。私にも憶えがある。今でも、後悔してるというかね、「今だったらもっと上手くやれたのになぁ・・・」と、ほんの最近になって思えてきたことがあって。だから、余計にこの詩は響いた。というより、堪えた。自分でも驚くくらい涙が溢れてきて困ってしまった。

でも、人は誰でもそうなんだろう。「あれが今だったら・・・」。そう、あの頃を苦々しく、そして、切なく思い返すものなんだろう。


(2012.02.26読了)





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