部屋(エマ・ドナヒュー)

新聞の書評欄で紹介されていた本。
興味が湧いたので手に取ってみました。翻訳物は登場人物の名前がなかなか憶えられなくて苦手なんですが、この作品は性格上、登場人物がそんなに多くなくて大丈夫でした~。

19歳で男に誘拐され、庭の納屋に監禁。そして、男児が生まれる。この物語はその5歳の男の子の目線で語られている。幼い子供と小さな部屋での監禁生活。子供にとっては、その部屋こそが世界の全てであり、TVに映っていることはホントのことではない。ある日、ママが脱出を計画し・・・。

想像してたのとはちょっと違っていたけど、最後まで目が放せなくって夢中で読んだ。小さな部屋でのママと二人だけの生活。脱出。初めての外の世界。そこで触れた沢山の人やルール。3部作のような構成になっていて、物語の中盤くらいで脱出成功。なので、脱出後の様子が思っていた以上に長く描かれていました。

全編に渡って緊迫感溢れる作品なんだけど、5歳の男の子の目線で語られるので、時折クスッと頬が緩んでしまったりもするんですよね。そんな状況でもないのに、ついつい可愛らしいなぁと思える場面も多かった。でも、それは子供目線だからこそで、それを大人の目線に置き換えると全く笑えない。・・・というだけでなく、暗く重い気持ちになったりもしました。

生まれてから小さな部屋でママと二人で暮らしているのが”普通”で”当たり前”だったジャックにとって、外の世界は広くて怖いところ。そして、「部屋」での生活が普通だった彼にとっては、外の世界は戸惑う事、知らない事も多くて、早く安全な「部屋」に帰りたくってしょうがない。あの部屋のカーペットが恋しくて堪らない。

「そうか、そう感じるのかぁ。」と思いつつ、たしかにそうなんだろうなぁとは思った。思ったけど、脱出後に、監禁されていた「部屋」に帰りたいと言い募るジャックには、「なんでよ!?」とちょっとイラッとしたりしちゃったんですよねー。彼にとっては、「部屋」で暮らしている事は「監禁」でもなんでもなく、それが”普通”だったんだってのは分かってるんですよ。でもね、実際にそういう立場にならないと、想像は出来ても本当の意味での理解は出来ないんだなぁと、心から、ホントにしみじみと感じました。今回ほど、それを痛感した事はなかったかもしれません。

初めての外の世界にジャックも戸惑いますが、脱出を心から望んでいたママも様々な葛藤や戸惑いを感じます。7年間という長い間、監禁生活を送ってきた訳なんだから、それも当たり前なんだけどね。そんなママの様子がジャックの視線で語られることによって、ますます突き刺さってくるものがありました。ママ自身の言葉で語られるより、5歳児の目線だからこそ、というものが多くあったように思います。

部屋での暮らしぶり、脱出後、この世界に適応していく事の難しさなど、本当にリアルでした。物語だと分かってはいても、そして、5歳児の語りにちょっと和んだりしつつも、暗澹たる気持ちになりました。日本でも、子供はいなかったですが、似たような事件があったんですよね。この物語を読みながら、あの彼女は今、どうしているんだろう・・・と思いを馳せずにはいられませんでした。

この物語を読んで、「面白かった」という言葉は適切ではないように思いますが、他に何という言葉を使っていいのか。自分のボキャブラリーの貧困さを感じて凹みつつ・・・。
最初から最後まで夢中で読みました。


(2012.02.09読了)





部屋
講談社
エマ・ドナヒュー

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