負けんとき-ヴォーリズ満喜子の種まく日々(上・下)(玉岡かおる)

貴族の娘として生まれた一柳満喜子という実在の人物を描いた小説。

いや~面白かった!
著者の玉岡さんはデビュー作からずーっと追っかけている作家さんなんですが、私的に外れたことがない。毎作、夢中で読んでしまいます。

明治半ばに貴族の娘として生まれた満喜子が、身分の差から乳兄弟である佑之進と結ばれる事は叶わず、その後、アメリカ留学を経てアメリカ人伝道師W.メレル・.ヴォーリズと結婚。第二次世界大戦を乗り越え、幼児教育に心血を注いだ姿が描かれている。

冒頭から物語に惹き込まれ、その後は無我夢中って感じで上下巻を一気読みでした。これまで同様、波乱万丈の人生をぐっと見据えて、とにかく前へ前へと進んでいく女性の姿が眩しく、とっても魅力的に描かれていました。

上巻は貴族ながら平民と同じ学校で学ぶ様子や、乳兄弟である佑之進との関係、そして、彼との別れを経て、傷心を抱えながら留学の為にアメリカに向かうまでを描いてある。あの頃はそれが普通だったんでしょうが、佑之進とのあれこれがじれった過ぎて!ドキドキしつつ、すっごくやきもきしちゃいました。身分制度って、想像以上に厳しいものだったんですね。それに加えて、佑之進の男の矜持までが邪魔をしちゃったんでしょうけど。

ラストはもうね、涙、涙・・・ですよ。満喜子の気持ちが本当に切なかった。

そして、下巻。キリスト教の伝道師として来日し、関西学院や同志社大学など数々の西洋建築を手がけた建築家、そして近江兄弟社を設立したW.メレル・ヴォーリズ。アメリカ留学から帰国した満喜子は彼と出会い、やがて周囲の反対を押し切って結婚。第二次世界大戦を乗り越え、現在の近江兄弟社学園の礎となる各種学校を開いてゆく・・・。

私的には「ヴォーリズよりも佑之進!」だったんですけどねぇ(笑)こればっかりは、しょうがないですね。ヴォーリズの時に出来た思い切った行動が佑之進の時には出来なかったってことが、満喜子の運命を決めたんでしょう。それこそ、タイミングなんでしょうね。

そういえば、満喜子の夫となったメリル・ヴォーリズは太平洋戦争前に日本に帰化し、「アメリカより来りて日本に留まる」との意味から「米来留」となりました。そして、終戦後はマッカーサーと近衛文麿との仲介工作に尽力し「天皇を守ったアメリカ人」とも称されている人物なのだそう。そういう予備知識無しで読んだので、作品の途中でそんな記述が登場した時にはすっごく驚きました。

なんだか、大変な方ばっかり選択してるように見える満喜子なんですが、それでも彼女はそんな運命に負けずがむしゃらに前に前にと進んでいく。そのバイタリティや芯の強さに脱帽でした。素直に「凄いな~」と思ってしまいます。貴族の娘として生まれながら、自分で自分の人生を切り開いていく強さ。夫となったヴォーリズの支えあってこそだったんでしょうけど、真似しようとしても真似できないですね。

途中、聾者の「はま子」さんの名前が登場して、違う意味でちょっとテンションが上がった。まさかこんなところでお名前を拝見するとはね。そういう繋がりもあったんだ!と、過去に別の物語で触れた人物との関係に驚いたのでした。


下巻のラストも上巻同様、涙、涙・・・。自然と涙腺が緩んでしまいました。


はぁ・・・。読み終わって、表紙を撫でつつしばし感慨に耽る。一人の女性の物語。とっても読み応えがありました。




(2012.01.13読了)




Amazonアソシエイト by 負けんとき〈上巻〉―ヴォーリズ満喜子の種まく日々 の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル




Amazonアソシエイト by 負けんとき〈下巻〉―ヴォーリズ満喜子の種まく日々 の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


この記事へのコメント

この記事へのトラックバック