春から夏、やがて冬(歌野晶午)

うわぁ、これはちょっと堪らないなぁ・・・。

高校生の娘を自動車事故で亡くしスーパーの保安責任者として働く平田と平田が補導した万引き犯のますみ。ふたりの関係は少しずつ近づいていき・・・。


ちょっとネタバレしてるような気が・・・。
なので、未読の方はお気をつけ下さい。





娘を轢き逃げされた平田の哀しみ、自分を責め続ける姿が痛々しい。そして、時効が成立し、とうとう娘を殺した犯人をどうすることも出来なかった悔しさが・・・。そんな平田の気持ちが詰まったこの物語は、重く苦々しさで一杯の作品でした。おまけに、万引犯として出会ったますみは同居の彼のDV被害にあってたりもして、余計にどんよりと重苦しさを連れてくるものでした。

そんな中、平田とますみの二人の関係が少しずつ近づいていくにつれて、希望みたいなものも感じられるようになって・・・。ちょっとホッとできる展開かしら?と思えて良かったんだけどなぁ。

後半、いきなり物語が動く。「え?そんな真相っ!?」と偶然というにはあまりにも出来すぎな出会いに、ご都合主義過ぎないかい?とうーん;;;となってしまった。でも、平田のその後の行動には納得というか、さもありなんだったんですよね。娘の死から自分を責めつづけていた平田にとって、あの行動は自然・・・と言ったら言葉が悪いのかもしれませんが、そうしてしまった彼の気持ちも分かるし、行動にも頷ける。もちろん、人としてそれだけはやってはいけないことだとは分かってますけど。

ところが、そこで終わらない。そこからまた一転。
・・・絶句。もうね、その真相には言葉が出ない。誰も救われない。堪らない。結局、ますみが平田の気持ちを読み誤ったってことなんですよね。子を持つ親の気持ちは、子を持ったことのない人には分からないってことなんでしょうか。人の気持ちって、やっぱり他人に全て推し量る事は出来ないってことを改めて感じました。

せめて最後まで平田が真相を知ることがありませんように・・・と、願わずにはいられません。



(2012.01.07読了)



春から夏、やがて冬
文藝春秋
歌野 晶午

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この記事へのコメント

べる
2012年01月20日 07:43
あのラストはほんとに救いがなかったですね・・・。途中まで、もうちょっと温かい結末になるのかな、と思っていただけに、読み終えてどーん、と落とされた気持ちになりました(><)。歌野さんらしいといえば、そうなんですけど・・・。ますみの気持ちが最後まで伝わらなかったのが悲しかったです。
すずな
2012年01月20日 14:10
>べるさん
本当に…。途中までは温かい結末を予想してたのに、ラストは本当に救いのないラストで…言葉が出てこなかったです。
ますみの気持ちが伝わって欲しかったですよね。

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