月の上の観覧車(荻原浩)

タイトル作を含む8編の短編集。

全体的にずっしりと重く、暗い雰囲気が漂う。死者を想ったり、過去を振り返ったりするものが多くって、読むのになかなか気力を使う作品でした。でも、なんだか惹かれる。読み進めれば進めるほど、重苦しい気持ちになっていくのに読むのを止められない。

作品に登場する人物達は50代くらいが多く、自分を重ねるにはちょっと若すぎる感はあるんだけど、それでも、つい自分と重ね合わせずにはいられない。というか、未来の自分に思いを馳せるって感じかな。自分が彼らの歳になった時、今この時をどういう思いで振り返るのだろう。懐かしく思う事もあるだろうけど、後悔も多いんじゃないだろうか。「あの時、ああしていれば」「あの時、もっとしっかり考えていれば」「どうしてあの時、あんな選択をしちゃったんだろう」等々。過ぎてしまった時間は戻せない。再会したい人、消してしまいたい出来事も沢山あるだろう。・・・てか、今でも既にあるし;;;そんな気持ちがいっぱいに溢れてくるような、そんなお話ばかりでした。

好きだったのは「上海租界の魔術師」「チョコチップミントをダブルで」「ゴミ屋敷モノクローム」かな。あと、「レシピ」も結構、好きだった。重苦しいラストが多い中、「チョコチップミントを~」はちょっとほんわかなれるようなラストが印象的なお話でした。「ゴミ屋敷~」は逆に切なさで胸がいっぱいになったんだけど、その堪らない気持ちがずーっと胸に残る。「レシピ」は退職日の夫の帰宅を待ちながらレシピ集をめくり、そのレシピから過去の男たちを思い返す妻を描いたもの。これも、なかなか興味深く読んだ。

あまり好きではなかったのは「金魚」かなー。だんだんと心が壊れていくような主人公の心情をぐいぐいと突きつけられているような印象で・・・。ずんずんと心が重くなっていく。印象的といえば印象的なんだけど、どうもなぁ;;;という思いが強かった。

そうそう。表題作はそれなりに好きだったけど、それよりも他作品の方に魅力を感じました。



取り戻せない過去を取り戻したいと願う。後悔や切なさで胸をいっぱいにして。そんな人間の悲しいサガのようなものをヒシヒシと感じる作品集でした。




・トンネル鏡
・金魚
・上海租界の魔術師
・レシピ
・胡瓜の馬
・チョコチップミントをダブルで
・ゴミ屋敷モノクローム
・月の上の観覧車




(2011.07.28読了)




月の上の観覧車
新潮社
荻原 浩

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この記事へのコメント

苗坊
2011年08月11日 10:35
こんにちは^^
私も主人公たちに当てはめるのはまだ青いかなと思ったのですが^^;それでも重ね合わせずにはいられないですよね。
私は割りと主人公と年齢が近かった「上海租界の魔術師」が好きでした。あと意外な結末で怖さと面白さを感じたのが「レシピ」でした。奥さんのほくそ笑む顔が思い浮かびます^m^
すずな
2011年08月12日 12:41
>苗坊さん
主人公たちより自分は若いんですが、つい重ねてしまいましたね。そして結構、重い気持ちになっちゃったりもして^^;
「上海~」良かったですよねー。そして、レシピも面白かったですね。そうそう!奥さんの笑みが想像できて…(笑)

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