かたみ歌(朱川湊人)

昭和30~40年代の東京下町のアカシア商店街を舞台に繰り広げられる連作短編集。

積読本の山の中からようやく救出。たぶん1年近く積んでたんじゃないかなぁ・・・。地元図書館休館中のこの時期に、積読本の山を地味ぃ~に取り崩し中です(笑)

生者と死者が交差する不思議なアカシア商店街。殺人事件が起きたラーメン屋をじっと見つめる男、死を予告するような張り紙をする少年、時空を越えて古本に挟んだメッセージのやり取りをする男女、死んだ夫が帰ってくるという女などなど、ファンタジーというよりホラー色強めな不思議な出来事が描かれるんだけど、ゾッとするより哀しく優しい感じ。そのどれもが、切なくって、それぞれの想いが胸に迫る。そして、それぞれの短編にはチラチラと他の短編の登場人物たちが登場する。登場するたびに年齢がばらばらで、そこで時系列がなんとなーく分かるようにもなっているんですよね。彼らのその後が描かれていたり、その前が描かれていたりするのも良かった。余計に切なさを感じる事もあったけど。

ただ、帯の「涙腺崩壊」に惹かれて手に取った本だったんですが、正直、そこまではないな~と思いながら読んだんですよね。でも!最後の1編でヤラレました。短編のどれにも登場する幸子書房の店主。彼の過去が語られ、その想いが分かった時、思わず涙腺が緩んでしまいました。・・・まぁ、”崩壊”とはいかなかったんですけど(笑)でも、最後の1編で、短編たちが一つになり、より胸に迫る作品集となったんじゃないかなーと思いました。

好きだったのは「栞の恋」「ひかり猫」「枯葉の天使」かな。あ、「朱鷺色の兆」も良かった。「栞の恋」は、ラストにそうきたか!と思ったし、それが分かった途端、ぎゅーっと胸を掴まれた心地がしました。とても切ない恋物語。「ひかり猫」は、やっぱ猫ちゃんのお話は弱いです~。これもラストで、猫ちゃんの気持ちが痛くって・・・。堪らなかった。思わず我家の愛猫をぎゅーっと抱きしめちゃった。・・・すっごい嫌がられたけど(笑)「枯葉の天使」は言わずもがな。「朱鷺色の兆」も自分がそうだったら・・・と考えると恐いけど、古レコード屋店主の語りがじわじわと沁みてくるような、そんなお話でした。


切なく哀しく痛いお話たち。でも、なんだか優しい気持ちになれる、そんな作品集でした。



・紫陽花のころ
・夏の落し文
・栞の恋
・おんなごころ
・ひかり猫
・朱鷺色の兆
・枯葉の天使



(2011.06.03読了)



かたみ歌 (新潮文庫)
新潮社
朱川 湊人

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