ヒア・カムズ・ザ・サン(有川浩)

小説新潮 2011年 06月号掲載の中編。


真也は30歳。出版社で編集の仕事をしている。
彼は幼い頃から、品物や場所に残された、人間の記憶が見えた。
強い記憶は鮮やかに。何年経っても、鮮やかに。
ある日、真也は会社の同僚のカオルとともに成田空港へ行く。
カオルの父が、アメリカから20年ぶりに帰国したのだ。
父は、ハリウッドで映画の仕事をしていると言う。
しかし、真也の目には、全く違う景色が見えた・・・・・・。




こんな、たった七行のあらすじから、有川浩×演劇集団キャラメルボックスのコラボレーション企画が誕生。このあらすじから、成井豊さんと有川浩さんのそれぞれが物語を編み上げるというもの。「うわー、これは面白い企画!ふたつの物語がどんな風になったのか比べてみたい!」と、思わず雑誌を衝動買い。・・・しちゃったんですが、よーく考えたらですね、九州の片田舎に住んでる私がキャラメルボックスさんの演劇を簡単に観れる訳がないんですよ;;;なんてこったい(渋)まぁ、でもね、有川ファンとしては小説だけでも読めて良かったです、うん。うん・・・。

ということで、面白い企画なのに、企画の半分しか参加できないという失敗をやらかしちゃった訳ですが、小説の方は充分に楽しませてもらいました。

有川作品のキャラで、本人が何らかの特殊能力を持っているっていうSF作品って無かったような気がするんですが。街が塩になったり、空に何かがいたり、巨大ザリガニが襲ってきたりってのはあったけど、人間自体が力を持ってるってのは無かったよね。・・・たぶん。なので、へ~珍しいなぁ・・・と思いながら読みました。

前半はその特殊能力を持っている真也について。人と違った力を持っているということは、良い事もあるけれど、その逆もあるんだよね。真也の感じている、自分の本当の実力じゃないという自信のなさ、そして、後ろめたさ。鬱屈した人になってもよさそうなのに、そうならなかった真也は、もっと自信を持って良さそうだけどなぁ・・・なんてことも思ったんですが。本人にしてみれば、やっぱりそんな風には思えないんでしょうね。

そして、後半は20年ぶりにアメリカから帰国した同僚のカオルの父親について。父親の事情がねぇ・・・。有川さん、そうきたか!ってな感じだったんですが。とっても切なかったです。思わず泣けてしまいました。長い道のりだったけど、これから素敵な家族になれるんじゃないかな。そう思えるラストで良かった。

そして、複雑な事情を解きほぐしたのは真也が持つ力のお陰なんですよね。そういう風に使えるのなら、使うのなら、本当にもっと自信を持ってもいいのに。これも実力のうち、そう思ってもいいのと思いました。でも、そう思えないところが、真也の良いところなんでしょうけどね。

そうそう!有川作品なのにラブ要素はほとんどなし。この流れならきっと・・・と、かなり期待してたんだけどなー(笑)あれ?っと肩透かしを食らった気分です。そういう意味では、ちょっと残念だったかな。もちろん、ラブ要素が無くっても楽しませてもらったのには変わりないんだけどね。

小説単体だけでも楽しかったんですが、この企画は演劇と小説の二つを比べるという醍醐味を味わってこそだと思うので、そういう意味ではなんだか「負けた」ような、そんな気分。何に「負けた」のかはよくわかんないけど(笑)キャラメルボックスさん、地方公演とかやってくれないかなぁ・・・。




(2011.05.23読了)





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この記事へのコメント

lime
2011年05月29日 12:00
これ読まれたんですね~。キャラメルも有川さんもどちらもファンなのでとっても気になっているのですが・・・。
ラブ要素がない!というのもなかなか衝撃ですね^^;読んでみたいです。キャラメルは時々福岡で公演をやっていますよ。この公演はないかもですが・・・。再演も何年かに一回はやるので苗坊さんが見れる日が来るといいですね^^
lime
2011年05月29日 12:07
ご、ごめんなさい!お名前を間違えてしまって・・・。すずなさんですよね。大変失礼を致しましたm(__)m。コメントって削除出来ないんですね~。
すずな
2011年05月31日 12:53
>limeさん
ラブ要素はほのか~にあるかなぁ…って感じでしょうか(笑)でも、それ以外の部分で読み応えがあったので十分、楽しませてもらえました♪
キャラメルボックスさんは福岡公演もあるんですねー!この公演は予定になさそうな感じでしたが、福岡なら行けるのでやってもらえると嬉しいんですけど…。

コメントの削除は管理人しか出来ないみたいです^^;ごめんなさい。。。
2011年06月03日 17:24
ここにも買っている人が!笑
そういえば、ラブ要素がなかったですね。

大人にとっても成長の瞬間があるって感じがしました。
一つ一つの課題をクリアしながら、もっともっと幸せに。
仕立ては随分と変わっていましたが、有川さんらしい物語でした。
すずな
2011年06月04日 12:31
>香桑ちゃーん!
うはははは。お陰で有川貧乏だよ(笑)

そうなのー!ラブ要素がなかったんだよねぇ。最初の方を読んだ時にはこの二人は…と思ったんだけど、意外な展開でした。
あぁ!大人になってからの成長物語だね。素敵なお話でした。
2011年08月08日 20:02
すずなさん、こんばんは(^^)。
今回は購入を見送って、図書館で借りてきました。結構順番待ちしましたが(笑)。
あ~私も、あれあれ?この人たちカップルになる話じゃなかったんだ~、って思いました(^_^;)。
でも、それがなくても楽しめるいいお話でしたね。
すずな
2011年08月10日 12:35
>水無月・Rさん
なんと!欲望に勝ったんですね~(笑)ウラヤマシイ。。。

有川作品なのに珍しくラブ要素がちょっと足りなかったですね~^^;ま、でも私も楽しめたので良かったですけど、ね☆

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  • ヒア・カムズ・ザ・サン

    Excerpt: 有川 浩 2011 小説新潮2011年6月 雑誌は買わないと決めていたのに、見かけると買ってしまう病気。演劇集団キャラメルボックスとのコラボのこの小説も、演劇のほうがどうせ観られないんだからと見送るつ.. Weblog: 香桑の読書室 racked: 2011-06-03 17:12
  • 「ヒア・カムズ・ザ・サン」(『小説新潮』2011年6月号掲載)/有川浩 ◎

    Excerpt: たった7行の、演劇のあらすじ。 そこから生まれた小説は、演劇とは全く違うもので。 原作でもノベライズでもない、全く違ったエンターテイメントとして両立。 ますます有川浩さんのフィールドが広がってる.. Weblog: 蒼のほとりで書に溺れ。 racked: 2011-08-08 19:57