あの日にかえりたい(乾ルカ)

過去と未来、死者と生者が交錯する。不思議な6編の短編集。

初読み作家さん。なんとなーく惹かれて手に取った作品。思ってた以上に読みやすくって、するする~っと読めちゃいました。

北海道を舞台にした、ちょっとゾクッとして、哀しくって、切なくって、でも、暖かく優しい物語。・・・なんのこっちゃ?って感じですが(笑)「死」が色濃く漂う作品が多かった。涙腺の弱い私は、ほとんどの作品で涙してしまったような気がします。激しく突き動かされる、というものではないのですが、じわじわと心に沁みる、そんなお話ばかりでした。


・真夜中の動物園
いじめられっ子の少年が、夏休みのある日、家を抜け出して辿り着いた夜の動物園。そこで出会った飼育員さんとの交流。最初の章だったので、普通のお話だと思って読んでいたら、最後でビックリ!うわ、そういうお話だったのかーっ!と叫びたくなりました。最後の最後まで描いてないところが、切なさ倍増って感じでして。やがてやってくる悲しい結末を思うとたまらない気持ちになります。

・翔る少年
大地震に遭った少年が次の日に出会ったおばさんは・・・。最初の章があったので、早い段階で「あ、そういうことか!」と分かった。分かったことによって、読み進めながら切なさがじわじわと胸一杯に広がっていく・・・。少年にもおばさんにも「良かったねぇ・・・」と呟きながら読了。

・あの日にかえりたい
タイトル作。介護士の卵でボランティアで訪れた施設で出会った老人。彼はいつも存在しない「池」を見ていた・・・。そうきたかー!な老人の行動に驚かされた。ただ、タイトル作の割りには私的には印象の薄い作品だったかな。

・へび玉
高校時代の友人達と約束した15年後の再会。その場所に向かった女性が再開した友人達は・・・。なんで他の友人達が全員ともなの?と疑問だったんですが・・・。これはねー;;;女性の過ごしてきた15年を想うと本当にタマラナイ。読み終わって、つい最初に戻って読み直しちゃいました。溢れる涙を止められなかった。

・did not finish
トップを目指すもそこに辿り着けなかったプロスキーヤー。彼が最期に見たものは・・・。まぁ、ありきたりといえばありきたりで、あまり意外性を感じなかった作品でした。

・夜、あるく
夜の散歩を始めた女性がハクモクレンの花の下で出会った老女は・・・。この短編集の中では一番好き。他の作品と違って「死」よりも「生」を感じられるお話だからかな。最後に「あ~良かったね。」とニッコリ微笑めてホッとしました。それまでとは違った涙で読了出来たのが本当に嬉しかった。




(2010.08.16読了)



あの日にかえりたい
実業之日本社
乾 ルカ

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この記事へのコメント

べる
2010年08月25日 07:18
乾さんはデビュー作から追いかけていてずっと注目している作家です。本書が直木賞候補になったのは驚きましたが、もっと評価されていい作家だと思ってます。これが気に入られたのでしたら、ひとつ前の『メグル』もお薦めです。個人的には、デビュー作の『夏光』が一番好きなので、それ系統の作品が読みたいなぁと思っているのですけれどね(ちょっとグロくて独特の世界観なので評価が分かれそうな作品集なのですが^^;)。
すずな
2010年08月25日 12:46
>べるさん
べるさんの注目作家さんだったんですね~!べるさんのコメントを読んでこのタイトルに惹かれた訳がわかりました。そうそう!直木賞候補作でした^^;
他作品も読んでみようと思ってたので、おススメいただけて嬉しいです♪図書館で探してみます~。<買わないところが…(笑)

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  • 乾ルカ/「あの日にかえりたい」/実業之日本社刊

    Excerpt: 乾ルカさんの「あの日にかえりたい」。 施設で会った80歳の老人は、介護士の卵でボランティアにきた「わたし」だけには心を開いてくれた。 彼の嘘のような失敗続きの半生記にただ聞き入る日々。あるとき.. Weblog: ミステリ読書録 racked: 2010-08-25 07:15