オープン・セサミ(久保寺健彦)

20代・30代・40代・50代・60代・70代のオトナ達が経験する”初めて”を描いた短編集。

なるほど、いくつになっても「初めて」ってあるんだよな、と思った。20代での先生デビューだったり、30代での子供の成長だったりってのは分かるけど、60代では山登りサークルに入って熊に遭遇しちゃったりもして。そして70代では・・・死。たしかに、人はその人生の最後で「初めて」を経験するんだよな。死を「初めて」の経験として短編にしちゃったところにはちょっと唸らされました。

・先生一年生
小学校5年生の担任の陽介。先生デビューに失敗し、学級崩壊気味なクラスに悪戦苦闘の毎日。イマドキの子供って、本当に大変なんだろうな、と思う。てか、自分の子供の頃もそうだったのかしら?担任の先生が先生1年生って経験をしたことがないので分かんないんだけど。それにしても、初対面って大事。職場に新入社員が入ってくる度に思うんだよね。優しくすると(言葉は悪いけど)つけ上がるし、だからって”初めて”の人に厳しくすることも出来ないし。適度な距離感っていうのが、今でも取れなくってワタワタしちゃいます。それが子供相手となると、もっと大変で大事なんだろうなぁ、としみじみと思いました。先生ってホントに大変な職業だなぁ・・・。

・はじめてのおでかけ
5歳の娘の初めてお出掛け(それも一人で)に、右往左往する父親のお話。面白かった!”心配性の父親”にうぷぷぷっと笑わせてもらいました。でも、笑いながら私も母親よりも父親の方に近い気がするーとも思ったり(笑)あ、でもね、私の姪っ子は小学校2年生になったんだけど、彼女については、母親や祖母(私の母)の対応を見ては「甘いなぁ。そろそろ一人で出来るんじゃないの!?」と内心では思ってたりするので、そうでもないのかなぁ。小学校2年生なら一人でお留守番とか出来るでしょう!ねぇ。そう思いません?・・・って、誰に聞いてるんだか(笑)

・ラストラ40
息子の運動会。怪我をしちゃた息子の代わりにリレーに出場する事になっちゃったシングルマザーのお話。息子には見栄を張っちゃう気持ちって分かる!分かるけど、こういう事態になっちゃったら焦るよなぁ・・・。

・彼氏彼氏の事情
50代の男の友情を描いたお話。・・・ちょっと違うような気もするけど(笑)学生時代と違って、社会人になってから同じ趣味の人を見つけるって難しい。それが職場なら尚更。それが、ひょんなことから気の合う人と出会ったら、そりゃ~嬉しくってテンションも上がるよなぁ。でも、そこはオトナなので、周囲、部下への気遣いも忘れちゃいけない。人間関係って複雑で難しいなぁ、とそんなことを思った作品でした。

・ある日、森の中
夫や息子の反対にめげず、山登りサークルに入った60代の女性。この短編が一番好きだったかな。ドキドキハラハラもしたけど、ちょっとニッコリできるお話でした。いつか、ご夫婦に山登りできればいいなぁ・・・とか、そんなことを思っちゃったり。

・さよならは一度だけ
このお話以外は、その年代の男女が主人公なんだけど、このお話だけは違ってました。10代の小学生の男の子が、母親の入院と父親の海外出張が重なった関係で、大伯父である70代男性と暮らすことに。その大伯父には秘密があり・・・。最後はふんわり笑えるような他の短編とは違って、ちょっと切ないお話でした。でも、小学生達は素敵な思い出を貰えたんだなぁと思ったら、胸に残っていた寂しさもフッと飛ばされたような気持ちになりました。



(2010.05.10読了)




オープン・セサミ
文藝春秋
久保寺 健彦

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この記事へのコメント

べる
2010年05月18日 07:48
一桁代から七十代まで、いろんな年代の『はじめて』が詰まった楽しい作品でしたね。ラストの作品だけはやるせない、それでも誰もが絶対にいつかは経験する『はじめて』でしたが。この年になるとなかなかはじめてのことに挑戦するのは躊躇してしまうところがあるのですが、いくつになってもチャレンジすることを諦めてしまったらいけないな、と思わされました。なかなか良い短編集でした^^
すずな
2010年05月18日 17:12
>べるさん
ラストの作品以外の「はじめて」は読んでて、つい笑ってしまうような楽しい作品でしたね~。
たしかに、年を重ねる毎に「はじめて」に挑戦しようと思うと勇気がより多く必要になってきちゃいますね。私も「チャレンジ」することに躊躇わないようにしなきゃ!と、べるさんのコメントを読んで思いました(^^ゞ

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  • 久保寺健彦/「オープン・セサミ」/文藝春秋刊

    Excerpt: 久保寺健彦さんの「オープン・セサミ」。 この歳で、こんな経験をするなんて……。いい大人になったって、人生は初めてのことだらけ。 でもそれは、自分には、自分でも気づいていなかった可能性がまだある.. Weblog: ミステリ読書録 racked: 2010-05-18 07:44