光媒の花(道尾秀介)

連作短編集。

最初のお話を読んで、ウツウツとかなり暗い気持ちになった。あ~道尾さんらしいお話だな~と思いつつ、この先に続く”暗さ”や”重さ”を想像して、ちょっと怯んでしまった部分もありました。気分的に、ちょっと軽めの明るいお話が読みたかったので・・・。って、そういう気分の時に道尾作品を手に取ったところから間違ってるんだけど(笑)ある意味、自業自得ですねぇ。

で、どどーんと来るであろう”負の波”を覚悟して先に読み進めたんだけど、意外や意外・・・という結果になりました。もちろん、それぞれのお話は、暗く、重く、切なく、衝撃的なもので、道尾作品で感じるやるせなさとか、救いようのなさとかもあったんです。でも、それだけではなくって、最後にはだんだんと希望の持てるような、前向きになれるような、そんな気持ちを感じる事が出来たんですよね。あ~良いお話を読めたなーと、そんな読後感を得ることが出来ました。もちろん、道尾作品としては、という注釈がつくんだけど(笑)

それぞれの章の主人公が、前の章の登場人物とリンクしてて、そのチョイスやリンク具合も良かった。お~次はこの人か!という意外性もあり、そうこなくっちゃ!という喜びもありで、そういう意味でも(地味ぃ~にだけど)、テンションが上がりました。最初の章と最後の章が見事に繋がって、その瞬間、カチリとひとつの”環”が完成したような、そんな錯覚を味わいました。これは読書人として至福の瞬間だったなぁ・・・と、そこまで言っちゃうとちょっと大袈裟かな(笑)

一番好きだったのは・・・ちょっと今回は優越を付け難い;;;希望を持てたという意味では、やっぱり最後の「遠い光」なんだけど、最初の「隠れ鬼」や「虫送り」も忘れ難い。というかね、最初に読んだ時は、この二つの章とその次の「冬の蝶」もなんですが、かなり救いがないなー;;;と暗澹たる気持ちになったんですよね。ところが、その後の章で彼らにもそれぞれの救いが見えて、最初に感じた救いの無さが払拭されちゃったんですよね。ということで、一つの章だけで優越を付けられない、ということになってしまいました。

私的には道尾作品の中でも1,2を争うくらい好きな作品となりました。うん、良かった。


・隠れ鬼
・虫送り
・冬の蝶
・春の蝶
・風媒花
・遠い光


(2010.04.24読了)




光媒の花
集英社
道尾 秀介

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この記事へのコメント

べる
2010年05月01日 06:50
デビュー作から道尾作品を追いかけていたファンとしては、前半の三つのようなやるせない結末の方が道尾さんらしい作品だとは思うのですが、後半三つのほっとするような優しさを感じる作品も良かったですね。前半で暗い結末を迎えた登場人物たちに最後の作品で光が見えるところも好きでした。個人的にはまた直木賞候補になりそうな気がするんですが、どうなるでしょうか(賞をとるかはともかく)。
すずな
2010年05月01日 15:26
>べるさん
私的には、道尾作品はやるせない結末が”らしい”と分かってはいても、それだけだと読了後の後味の悪さみたいなものがなかなかで…^^;そういう意味で、この作品はとっても良かったのです。
直木賞候補ですか~なりそうな気はしますね。
道尾作品のコンプリートを目指してるんですが、これがなかなか…^^;

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