鉄の骨(池井戸潤)

は~読み応えがあった~。面白かった~!
最初にこの本を手にした時は、なかなかの厚さに恐る恐る読み始めたって感じだったんだけど(笑)、読み出したら厚さなんて全く気にならなかった。夢中で読みました。

「談合」。世間一般の常識としては、それは憎むべき”悪”の言葉。「官製談合」となれば、もっとその”悪”度?は高くなる。というのは、理性では分かってるんですが、その業界とびみょーに関わりを持つ身としては、「ダメ」の一言でバッサリ切れない部分があります。現場監督から業務課(巷では談合課と呼ばれている)に異動になり、戸惑い、葛藤しながら、その談合を進めることになった、この作品の若い主人公のように。「必要悪」という言葉は、ハッキリいってその行為を正当化する都合のいい言葉だというのも分かってますが、それでも、その言葉を使う気持ちは理解出来る。

「談合」というのは、日本の憎むべき慣例で、どこの自治体でも現在、それを無くす事に血眼になっているのが現状。でも、その結果はどうなのでしょうか。本書の中でも役所が決めた予定価格に悲鳴をあげる場面が出てきますが、現実もそう。「それはいつの価格で、何を基準にその価格設定になってるのか!?」そう叫びたい企業が多いのではないでしょうか。確かに工事価格を抑える事には成功し、「昨年度より○○億円減りました」と役所が胸を張るかもしれない。でも、それを受注している企業の現状はどうなのでしょうか。「無いよりはまし」と利益の無い工事を受注した結果、それが経営を圧迫し、果ては倒産。「そうやって赤字企業は淘汰されるんだ」と嘯く銀行員の姿が描かれていましたが、思わず「何様ですか?」な~んて彼に悪態をつきたくなりましたねぇ。企業が倒産したら失業者が増えるんだよね。そしたら銀行だって、回りまわってその分が圧し掛かってくるんだけどなぁ・・・。もちろん、「土木は儲かる」と利益取り放題だったその昔が良いとは思わないし、官製談合なんて無くすべきだとも思うんだけど。談合だって無いに越した事はないと思うし。なんだけど、でも・・・と、現実を見れば複雑な気持ちになっちゃうのが正直なところです。ホント大変なんですよー。

と、なんだかウダウダと語っちゃいましたが(笑)

そんなウダウダなんて関係なく、本当に面白かったです。業務課へ異動させられた若い主人公が、戸惑い、葛藤しながらも必死になって仕事に取り組む姿に、ついつい読むほうも力が入っちゃったし、大学の時から続く銀行員の彼女との関係がどうなるんだろう・・・とヤキモキもしちゃいました。「談合」の方がメインだったので、あのラストもしょうがないとは思うんだけど、主人公と彼女がその後、どういう関係を築いていったのかってのがね、ちょっとウヤムヤ気味だったのが気になるところかな。恋愛関係はスッキリさせて欲しいもんです(笑)

あとですね~。検察の方の描かれ方がイマイチでして。もうちょっと突っ込んで描いて欲しかったかも、と思いました。こちらもラストがウヤムヤで終わったような印象が拭えないような、でも、メインは企業側だということを考えれば、ああいう描かれ方で良かったような、そんなびみょーな気持ちです。うーん、なんだかスッキリしないですねぇ(笑)

あ、でも面白かったってのは本当なんですよー!


(2009.12.30読了)



鉄の骨
講談社
池井戸 潤

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この記事へのコメント

べる
2010年01月07日 00:10
すずなさん、こんばんは。読み応えありましたね~。でも、分厚いけれど、続きが気になってぐいぐい読まされてしまいました。『談合』が必要悪と見なされる理由が良く分かりました。一見とっつきにくいテーマをとてもわかりやすく掘り下げてエンタメ小説に仕上げる手腕はさすがでした。面白かったですよね^^
すずな
2010年01月09日 12:51
>べるさん
分厚いけれど読み応えのある作品でしたね。
そうなんですよね。とっつきにくテーマなのに、ぐいぐいと読ませるものがありますよね。ホント面白かったですね~!
2012年01月21日 10:47
すずなさん こんにちは
すずなさんは「業界とびみょーに関わりを持つ身」
ですか 笑
僕もそれなりに関わりを持つ身です 爆
思うことも考えることもたくさんありました。
いろいろな意味でこの小説は面白かったです!
すずな
2012年01月23日 12:51
>yoriさん
お!yoriさんも関わりのある職業なんですね(笑)
色々と考えさせられる作品でした。でも、面白かったですね!

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