転移(中島梓)

2009年5月26日にガンで亡くなった著者(=栗本薫)の最後の闘病記。

5月17日、昏睡状態に入るまで書き綴った日記ということで、かなり覚悟をして読んだ。本当は読むかどうか迷ってたんだけど、「ずっと追いつづけた作家の最後の絶筆なのだから」と自分に言い聞かせて手に取った。

なんだかいつも以上に取り留めのない文章になりました・・・。

思っていたほど、涙腺は刺激されなかったことに、気が抜けつつもホッとしている自分がいます。もっと壮絶な内容を想像していたので、普段の食事のこと、外出時の着物のこと、そして、病気からくる痛みのことが淡々と綴られている文章に最初は戸惑った。でも、読み進めていくと、その文章の中から病状が少しずつ悪化していくのが伺えて、なんとも重い気持ちにはなりました。日記形式で書かれているんですが、亡くなった日が分かっているだけに、日付を見るたびに「あと2ヶ月か」「あぁ、あと1ヶ月だ・・・」と、カウントダウンをするかのように読み進めいていることに気づいた時には、かなり愕然というか、複雑というか、なんだかとってもたまらない気持ちにもなりました。

昏睡状態に入った日まで続く日記。書きつづけることへの彼女の執念、作家としてのサガにただただ圧倒される。そして、この状態で「グイン」をあそこまで書きつづけてくれたのかと思うと、「なんとか完結させてよー」「闘病記とか書くよりグインを書いてよー」などと、散々ブチブチ呟いていた自分を叱りたい気分になりました。もちろん、グインは完結させて欲しかったという気持ちは今でもありますけどね・・・。そこは読者のワガママってことでご容赦願いたい。

最後の日記となる5月17日に残された「ま」の一文字。それまで、自分でも驚くほど淡々と読んできたのに、その一文字を見た瞬間に思わず涙が滲んだ。やっと彼女の死を受け入れられたような気がする。とはいえ、まだ「グイン」以外の死後に発表された本を手にする気持ちにはなれないんだけどね。
彼女はこの「ま」の後になんと続けたかったのか・・・。「まだ生きたい」なのか「まだ書きたい」なのとか、それとも真相を知ったら気が抜けちゃうくらい普段のことだったのか・・・。なんでもいい。もっともっと彼女の文章を読んでいたかった・・・。

改めてご冥福を祈りたいと思います。。。




転移
朝日新聞出版
中島 梓

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