廃墟建築士(三崎亜記)

短編・・・いや、中編集かな。
4編が4編とも、あいかわらずの「三崎ワールド」全開な作品でした。いや~こういう設定を考えつく三崎さんの頭の中を、本気で覗いてみたいと思いましたです(笑)

どの作品も、現実と虚構の狭間というか、現実の中にちょっとだけ虚構を混ぜ込んだような感じ。その混ぜ込み具合が絶妙です。よーく考えれば、かなりぶっ飛んだ設定なんだけど、読んでる間中、なんだかありえそうな話だよなぁ~なんて思えてしまう。地面に接する「7階」なんて、本当にありえないのに。ありえないのに、ありえそう・・・なんて思えちゃう(笑)読んでる間中、著者に思いっきり騙されてるとでも言うんでしょうか・・・。

・七階闘争
1編目から三崎ワールドに惹き込まれる。
「地面に接する7階!?何言ってんの。6階と8階の間にあるから7階って言うんじゃないの。地面に接するのは1階!」・・・な~んて、ヤボなことを言ってはいけません。7階には7階の歴史があり、希少性、特殊性を考えると6階や8階とは比べ物にならないんだから!・・・と、思いっきり反論したくなります(笑)それにしても、一夜にして7階が消失し、その7階と共に運命を共にする人が・・・とか、かなりシュール。でも、重くならないのは淡々と綴られる文章のお陰かな。

・廃墟建築士
・・・なんつーか、こんな設定をよく考えつくよなぁ、と唸らされる。廃墟を作る「廃墟建築士」。廃墟文化三流国とか、偽造廃墟とか。現実で起こった事件を彷彿させるようなことも起こって、なんだかこの現実を思いっきり風刺してるところも好きです~。

・図書館
本好き、図書館好きな私としては、タイトル作品よりもこっちの方が好きでした。というか、この作品集の中で一番好きなお話。アンソロジー集「本からはじまる物語」に収められた作品の姉妹篇のような印象を受けたんですが、どうなんでしょう。
図書館が「野性」を持つなんて、う~痺れるぅ!と唸りそうになります(笑)「夜間開館」がこんな設定になるとは、もう本当に三崎さんってば凄いです~。飛び回ったり、浮遊する本達。もし、暴走したら・・・と考えるとちょっと恐いけど、こんな図書館に行ってみたいと思えました。
「図書館の本」について語りながら、人間の愚かさ、傲慢さを語っているのも印象的。
「だが、自然は人とは違う時間と秩序で超然と存在し、忘れた頃に情け容赦なくすべてを蹂躙し、無に帰する。」(p160)

・蔵守
最初、蔵守と蔵の意識がごっちゃになってしまって、理解するのに時間が・・・;;;でも、「???」と疑問符を頭一杯に散りばめつつも頑張って読み進んでいくと、「あ、そういうことか!」「お~そっちか!」と段々とこの設定に慣れていって、面白さがじわじわと沁みてくる感じ。その感覚が堪らない。最初に設定紹介みたいなものがないところが、正に「三崎ワールド」でした。



廃墟建築士
集英社
三崎 亜記

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この記事へのコメント

2009年05月13日 22:30
すずなさん、こんばんは(^^)。
三崎さんの頭の中を見てみたいですよね~♪
是非この独特の世界観の設定ノートを、熟読させてほしい水無月・Rです。
やっぱり「図書館」が一番ですね。かつて野生だった存在を繋ぎとめて、図書館とした・・・。カッコいいし、完全には支配できないその野生が、書物の自由性というのでしょうか、そんなものを高らかに謳いあげてる感じが、とても素敵でした。
すずな
2009年05月17日 05:59
>水無月・Rさん
ホントに一度、三崎さんの頭の中を覗いてみたいですね!
水無月・Rさんも「図書館」が良かったんですね~♪”野性”とか”飛び回る”という表現が、おっしゃるように「書物の自由性」を表現しているようで、本読みにはとっても魅力的なお話でしたね。

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  • 『廃墟建築士』/三崎亜記 ○

    Excerpt: ・・・相変わらず、水無月・R内「設定ノートが見てみたい作家さん」ナンバー1な、三崎亜記さんです。 「廃墟」が「文化の尺度」になるというのは、どういう世界・・・?作品中で滔々と説明されることが、全然理.. Weblog: 蒼のほとりで書に溺れ。 racked: 2009-05-13 22:20