儚い羊たちの祝宴(米澤穂信)

5編の短編集。

後味の悪さで読むのを躊躇していた米澤さんなんですが、この作品には雑誌「Story Seller」で読んだ「玉野五十鈴の誉れ」も入っていると知って手に取りました。こういうの好きなんですよね~。淀んだ世界に囚われた少し歪んだ人々のお話。背筋がぞくぞくっとなる快感を味わいました。

その全てが「ラスト一行で落ちるミステリ」というのがウリらしい。確かに、「うをっ!」というか「ぅひー;;;」と思わせる、それまでの展開をクルリとひっくり返すようなラストで、毎回「そうきたかーっ」と唸らされてばかりだった。でも、”ラスト一行で”というのはどうかな、と。もちろん、その短篇を締めるに相応しく、ぞくぞくっとするような素晴しい一行であることには異存はないんだけど・・・ね。

どのお話も上流階級に属する女性たちが主人公。お嬢様だったり、妾の娘だったり、使用人だったり。家に囚われ、歴史に囚われ、自分の意志とは違う何かに翻弄されつつ、それに抗おうとするかのように殺人に手を染める。歪んだ、歪まされた人々。彼女たちの、淡々とした独白調で進む物語に魅了されました。人々を見下すような尊大さであるにもかかわらず、悲哀に満ち溢れていて切ない。最後のお話以外は、お互いに繋がりという繋がりはなく、ただ大学の読書サークル「バベルの会」がチラリと出てくるというだけ。それでも、お互いが影響しあうというか、共鳴しあって、より一層の”黒さ・暗さ”を醸し出しているようでした。

特に好きだったのは「北の館の罪人」かな。最後の最後、見つめる絵の意味に気付いたところには、おもわずゾクゾクッとしました。逆に「山荘秘聞」は、展開、ラスト共に予想通りに進んだので、実はちょっとガッカリ気味なお話だったかな。面白かったけど。好きではあったんだけど。

5つの物語。そのどれもが、「堪能した」という言葉が似合うような作品ばかりでした。

・身内に不幸がありまして
・北の館の罪人
・山荘秘聞
・玉野五十鈴の誉れ
・儚い羊たちの晩餐



儚い羊たちの祝宴
新潮社
米澤 穂信

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この記事へのコメント

べる
2009年01月27日 07:12
すずなさん、こんにちは。えっと、とっても恥ずかしいんですけど、私、最初読んだ時『山荘~』のオチにピンと来なかったんですよ^^;;他の方に教えて頂いてやっと腑に落ちたという・・・(恥)。米澤作品とは相性が悪く、いつも歯切れの悪い感想を書いて引け目を感じていたのですが、これは非常に好みの短編集でした。ちなみに私は『玉野五十鈴~』が一番オチが黒さ爆発で(笑)好きでした^^
すずな@主
2009年01月27日 10:29
>べるさん
・・・そう言われると自分の解釈にチト自信がなくなってきたり^^;;;ま、思い込みでもスッキリすればいいのだ!と思うことにします~(笑)
私も他の米澤作品は、うむむむ;;;という感じだったんですが、これは本当に良かったです。べるさん同様、私好みの短編集でした。
『玉野五十鈴~』は雑誌掲載時に既読だったので、他のお話より衝撃が少なかったのかも^^;でも、この作品が入ってなければ手に取らなかったと思うので、私にとっては、この短編集の中ではちょっと特別なお話ではあります。
たまねぎ
2009年01月30日 00:58
story sellerってめちゃくちゃ豪華ですね。文芸雑誌はあんまり読まない方なんで、完全にノーマークでしたよ。惜しいことをしました。
この本はそのブラックさもさることながら、登場する本の数々が気になってしまい、これまた頭を抱えておりますよ(笑)。
すずな@主
2009年01月30日 13:51
>たまねぎさん
「story seller」は新潮文庫で今月、発売される(た)模様。むー。と思いますが(優越感がぁぁ;;;/笑)、でも沢山の人に読んで欲しいとは思いうので良かったかな。本屋さんへGO!(笑)

あ~わかります!色んな本が登場して気になりますよね。私もでした。おまけに最近、読みたい本がどんどこ増えまくって;;;幸せなことではあると思うけれど、困りものですねぇ・・・。
2009年02月08日 20:08
すずなさん、こんばんは。
わたしもすずなさんとおなじく「北の館の~」が一番好きでした。きれいにオチがついていますよね。
自分のブログではいろいろ文句もかきなぐりましたが、好きな作品集ではありました。いえ、読み返せてはいないんですが。最終話の疑問が噴出しそうで…(-_-;)
そして米澤さんにはいつか「お嬢様…ほんとにお好きなんですね…」と言いたいわたしです(笑)。
すずな@主
2009年02月10日 05:22
>まみみさん
「北の館の~」は最後にぞくぞくっとくるオチが良かったですよね~。
米澤作品って、そんなに読んでないんですが「お嬢様好き」なんですねぇ。これから他作品を読んでいこうと思ってるので、そのうち私も言いたくなるかもしれません(笑)
2009年02月10日 22:21
こんばんわ。TBさせていただきました。
ぞくっとしましたねぇ。怖かったです。
でも、面白いんですよね。だから米澤作品は引き込まれます。
「北の館の罪人」は最後はぞっとしましたねぇ。
あの後どうなったんでしょう。
最後の表題作の最後もぞっとしました。
すずな@主
2009年02月13日 05:29
>苗坊さん
ぞくっとする恐さが堪らなーい!と叫びたくなる面白さでしたね~。
「北の館の罪人」のその後は気になりますが、読んでみたいような、みたくないような・・・ですね^^;
2009年03月24日 23:01
すずなさん、こんばんは(^^)。
因縁極まる旧家、複雑な事情を抱えるお嬢様、年若いのにプロフェッショナルな使用人たち・・・。
何ともミステリーな状況だから、起こるべくして起こる事件なんだけど、最後の最後に明らかにされるその真実・・・!
驚かされましたねぇ。
すずな@主
2009年03月25日 05:49
>水無月・Rさん
旧家特有の因縁やそこに属する女性達の狂気が合わさって、黒く暗いミステリ作品でしたねぇ。最後の真実には、どれもぞっとして驚かされました~。
エビノート
2009年06月30日 20:31
ラスト一行ではなかったけれど、ひぇぇ~実はそうなの!?というブラックなオチが効いていてピリリと辛い短篇集でした。「玉野五十鈴~」一編でも面白いなと思ったんだけど、テイストの似ている短篇が並んで余計に余韻が深くなった気がします。
すずな
2009年07月02日 05:30
>エビノートさん
ラストのオチが効いてましたね~!そのブラックさにゾクゾクしました。
テイストが似てるものが並ぶとちょっと飽きてきちゃったりするんですが、この短編集ではそれが逆の結果になったようで、エビノートさんのおっしゃる通り、余韻が深まった感がありますね。読後、堪能したな~という思いが強かったです。

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