わくらば日記(朱川湊人)

不思議な力を持った姉とその妹。二人が遭遇した事件を妹の語りで描く連作短編集。

昭和30年代、東京の下町で母と姉と暮らす主人公。病弱な姉は、人の記憶や、その場所で起こったことを”見る”ことが出来る不思議な力を持っていた。その力のせいで巻き込まれる事件や、その力を知った刑事からもたらされる事件の数々。

昭和30年という舞台も効を奏したのか、物悲しく切なくもありながら、どこか優しい。そんな雰囲気が物語全体に流れていました。事件はひき逃げや殺人事件など、血生臭いものが多かったんですが、そこまで暴力的なものは感じなかった。ガツンと訴えるものは無いんですが、何故か心に沁みるというか、気が付くとこの世界に惹き込まれていました。

人と違った力を持ってしまったが故に、否応無く知らされた差別や、感じてしまった恐怖。姉さまが自ら感情を吐露することはなかったけれど、伝わってくるその悲哀のようなものが胸に痛い。

”短命だった姉”と最初から語られるので、不思議な力を使う度に、命を縮めていたのだという妹の想いがヒシヒシと伝わってくるお話でもありました。悲しいラストに向かってるのだという、悲壮感みたいなものが物語全体を覆っているんですよ。読みながら、こちらまでその想いに支配されていく感じでした。いつ、その”終わり”がやってくるのかと、ある意味ドキドキしながらの読書になりました。

結局、姉の最期は語られないままでして。もったいぶらないでー!と言いたくもなりましたが(笑)もちろん、続編が出されるのでしょう。姉さまの今後もですが、茜さんの今後も気になるラストでした。


わくらば日記
角川書店
朱川 湊人

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この記事へのコメント

2008年11月24日 20:37
そうそう、思わせぶりな文章があるから続きが気になっちゃうんですよね~。
姉さまと呼ぶ妹の語り口がとっても柔らかで切なくもあるんだけど、温かい気持ちになれました。
すずな@主
2008年11月25日 15:42
>エビノートさん
「また今度~」とか書いてあるのに、それはいつっ!?って感じでしたね(笑)
そうそう。「姉さま」という語り口が良かったですね。姉への妹の想いが伝わってきました。
2012年08月23日 19:28
すずなさん、こんばんは(^^)。
姉妹の絆の確かさ、茜や神楽との関係の優しいつながりなど、心温まるものがありましたね。
だけど、『ホルモー』で挟んじゃいけなかったわ…(笑)。
すずな
2012年08月24日 12:58
>水無月・Rさん
妹が短命だった姉を語るということで、切なくもありましたが、それよりも心温まるものがありましたよね。

…ホルモーを挟んでの読書ですか!それはそれは(笑)

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