荒野(桜庭一樹)

ふぁ。桜庭さんって、こんなお話も描くんだなぁ・・・。今まで読んだ桜庭作品の読後感って、心がざわざわする感じだったのに、この作品はふんわりと優しい気持ちになった。うわー、これ好き。

直木賞受賞後1作目。でも、最初の2章はその前に発表されていたもので、最後の1章を追加して1冊に纏めた作品。12歳~16歳の山野内荒野の恋物語。中学生になった荒野が”好き”という感情に出会って戸惑い、でも、少しずつ大人になりながら”好き”や”恋”というものを知っていく・・・。

これはねぇ、自分の”あの頃”を思い出さずにはいられないお話ですね。”あの頃”を”あの気持ち”を懐かしく想いながら、ついつい浸りながら読んだ。そして、荒野が中学生から高校生へと成長していく過程を、時には一緒になってドキドキし、時には母親のような目線で見守っている自分を感じたり。

最初は、荒野と友達の会話や、悠也との会話が面白くって、うぷぷぷと笑いながら読んでいたんだけど、父親の再婚話からの展開に、やっぱり桜庭さんね;;;とちょっと重い気持ちになった。でも、予想に反して、じとーっとした暗さを感じることは無く最後まで読めたのは良かったです。もちろん、荒野の家庭環境は良いとは言えず、小説家のお父さんの奔放ぶりはなかなかでしたけど。それでも、今まで読んだ作品とは違って、荒野が社会や大人と闘うことはない。ごく普通の女の子という印象で、そこが自分と重ね合わせ易かったのか、のめり込むように読んだ。途中で止めることができなくなって一気読み。

荒野の恋物語であるけれど、家族の物語でもあった。少しずつ義母の容子さんと親子に、家族になっていく様子が心地よかった。急がなくてもいいんだよ、いつのまにか”家族”になっているんだよと、著者のそんな優しい目線を感じたり。あぁ、家族だけじゃなく、悠也との関係もかな。少しずつ恋人同士になっていく様子も心地よかったなぁーと、これを打ちながら改めて感じました。

読了後、荒野と悠也のシーンを何度も何度も読み返した。ほわ~んと暖かく優しい気持ちになれる。これ、買っちゃおうかなぁ・・・。手元に置いて、何度も読み返したい。がさがさと心がささくれた時に読んだら、なんだかほっと出来そうな気がする。

この続きのお話はいらない。だって、聖子ちゃんの「続・赤いスィートピー」を聴いて受けたショックを、また味わいたくないもんなぁ(笑)(あ、年代がバレバレ^^;)出来るなら「悠也」というタイトルの本を読んでみたいな、とは思う。荒野と同じ時をどういう思いで過ごしたのか知りたいな、と。でも、読めないほうがいいのかな・・・とも思ったり。
このまま、壊れないように真綿で包んで心の奥に仕舞いたい。そして、時々そぉーっと取り出しては掌の上で眺めたい。そんなお話でした。



荒野
文藝春秋
桜庭 一樹

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この記事へのコメント

2008年07月11日 00:17
うわぁ。なんか、この本、読みたくなった!
買いだめをもう少し消費したら……次の購入リストに……あうー。
すずな@主
2008年07月11日 14:15
>あまねちゃん
うわぁ。ハズシタラゴメンヨ。ドキドキ^^;;;
いっぱい積読本があるみたいだもんねぇ(笑)・・・って、人のこと笑えないけどさ;;;
がんばって消費しませう。
2008年07月12日 23:20
周りに左右されず、自分のペースで成長してゆく荒野の姿は、初々しくそして何だか逞しかったです。
この作品は、確かに続編は要らないですね。この一冊だけで満足。ほ~ぅっと満たされた気持ちになれますもの。
すずな@主
2008年07月14日 16:06
>エビノートさん
そうですね。荒野って、ふわっとしてそうに見えるのに、意外にも揺るがない強さを持っている少女でした。
今まで読んだ桜庭作品と読後感が違っていて、ほんわかした気持ちになれる作品でしたね。普通は続編をっ!って思うんですが、そう思わせない魅力を持った小説でした。
2008年07月16日 23:18
すずなさん、こんばんは(^^)。
丁寧に描かれた少女の成長が、とても美しく愛おしかったですね。
自分の青虫時代を思い出してしまいました。と言っても、私のあの頃は雑念三昧すぎで、荒野にはとてもなれそうにもありませんが・・・。
はうっ、「続・赤いスイートピー」ネタ、私も分かっちゃいますよ(笑)。

すずな@主
2008年07月18日 16:35
>水無月・Rさん
読了後に思わず「はぅぅ」と浸ってしまうような作品でしたね。
私も自分の青虫時代を思い出しました。水無月・Rさんさんと同じく雑念三昧な日々でしたけど^^;
さすがに同世代!分かっていただけて嬉しいです~(笑)
2008年08月04日 14:57
この物語については続編は無用だと思いました。ならば悠也もそうですし奈々子さんや振られちゃった男の子などの別の人生を別のところから見てみたいです。
すずな@主
2008年08月05日 11:48
>確かに、さん??
きっと、たまねぎさんだと思いますが・・・。

いつもなら、この続編を!と思っちゃうんですが、この作品の長編はいらない、読みたくないと思いましたね。
できれば、悠也の同時期のお話を読みたいなーと思います。あ、奈々子さんやあの男の子のお話も興味ありますね~。
2008年09月20日 12:44
こんにちは。TBさせていただきました。
面白かったです。
桜庭さんの書く中学生は痛々しい子ばかりで、読んだ後にずしっと来るのですが、この作品はそれはなかったですね。
爽やかさも感じました^^
悠也との今後も気になるところです。
すずな@主
2008年09月20日 14:24
>苗坊さん
今まで読んだ桜庭作品と違って、痛々しい子供たちが登場しなかったので、読むほうとしてもほっと出来るお話でしたね。だから、印象深かい作品となりました。
悠也との今後も気にはなりますが、きっとこれからも穏やかな二人の関係が続くんじゃないかな・・・と思います。・・・願望ですが^^;
2008年11月11日 00:12
こんばんは。
TBさせていただきました。
これはすごく面白かったです。荒野と悠也の関係が好きでした。
『悠也』の気持ちを描いた本も是非とも読んでみたいですね!!
すずな@主
2008年11月11日 14:36
>masakoさん
良かったですね~!桜庭作品の中で一番好きな作品です。
「悠也」を描いた本も読んでみたいですよね。

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