新世界より(下)(貴志祐介)

はぁ~なんかスッゴイ疲れたというかなんというか・・・。肩の力をぎゅーっと入れて読んでしまいました。面白かった。分厚さも感じないほど、夢中になって読みました。面白かったんだけど、いや、だからこそ、かな。上手く感想を書ける自信がない。・・・って、それは今回に限らずいつものことかな(笑)

上巻は子供時代のお話だったからか、ファンタジーっぽくワクワクの冒険や成長物語的な感じでした。が、下巻ではそれが一転、主人公も大人になり、上巻から仄めかされていた危機を向かえ、街の存続をかけた闘いや呪力を持つ人々が支配する世界の成り立ちを描いたSF作品という感じでした。

下巻は上巻のラストから数年が経過した子供たちを描くことから始まる。早希をはじめ子供達は、瞬のことを忘れさせられているんだよ;;;なぬーっ!?と拳を握りつつ、そうだよなぁーとも納得。大人達は、そうやってこの町を、世界を、守ってきたのだから。でも、そうやっても、強い”想い”は忘れない。忘れる事は出来ない。子供達は、思い出すキッカケを見逃さず、忘れさせられた少年を心のうちに少しずつ蘇らせていく。

そして、またしても友を失う出来事。読んでる方としては、うわーそれはちょっと危険だよー、騙されちゃいかんよー、と思わず叫びたくなりましたねぇ。どうしてそこまで素直に信じられるのかワカラン。安心しきってて、あまりの危機感の少なさにイライラしちゃって「ばかばかばかばかーっ」と悪態をつきたくなっちゃったり。あいかわらず、柄の悪い読者です(笑)

それからまた、ポーンと時間が飛ぶ。10年くらいかな。ぬおー!?と戸惑いますが、最初から過去を振り返る形式で書かれているのだから当然なのかな。おまけに、過去を振り返って書かれているもんだから、時々、すっごぉーく思わせぶりな文章が出てくるのが、ストレスの元でして(笑)だからなにっ!?これがどうなるのさーっ!?と先へ先へと読み進むスピードが一段とあがりました。・・・著者にまんまと乗せられていたような気がする;;;

最後はずーっと仄めかされていた”最大の危機”が訪れる。今までの、特に上巻での、溜めて溜めて溜めて・・・という感じが一気に解き放たれ、パチリパチリと心地よいくらいの爽快さでピースがはめ込まれていくような、そんな感じでした。それまでの、冗長さはこの為にあったのか、と改めて納得させられるような・・・。

ラストはなかなか衝撃的でした。危機を脱する為に取られた行動。自分達が蒔いた種なのに、自分達では刈り取れない。他の種族によって助けられ、守る事が出来た人間社会。それなのに、人間達は相も変わらず同じ営みを続けていく。そして、バケネズミの正体は・・・。

現代を古代と呼ぶ1000年後の世界。呪力(念動力)を持つ人々が世界を支配し、昭和初期のような生活を送る世界。その世界はどうやって成ったのか。この1000年がどう続いてきたのか。

この現代への揶揄、自嘲、そして警鐘。人間の愚かさ、傲慢さ、身勝手さをグイグイと突きつけられたような心地がしました。痛いんだけど、目を背けたくもなるけれど、事実だよなぁ、私の内にもそういう部分は在るよなぁ、と思う。痛さに顔をしかめながらも目を背けることは出来ない。折りよくというべきか、読了した数日前の6月5日は「世界環境デー」。人間が地球にしてきたこと、そして、その結果を目の当たりにする機会も多かった。考えなければいけない。何かしら行動しなければいけない。そういう思いを後押しする作品でもあったような気がします。

・・・とは言いつつも、こうやってPCに向かうことを取り上げられたら・・・ということは想像したくない!とも思う;;;救いようの無いくらい愚かで傲慢で身勝手なのである。はやり私も人間なのだ・・・。


**新世界より(上)



新世界より 下

この記事へのコメント

2008年06月09日 18:29
とりあえず、お疲れ様でしたぁ(笑
驚きの厚さでしたよね。
でも、それが苦にならないストーリィ。

>救いようの無いくらい愚かで傲慢で身勝手…
自分だけがよければ、という人間の暗部があぶりだされたようで、考えさせられますね。
すずな@主
2008年06月10日 14:44
>じゅずじさん
分厚い作品でしたね^^;
でも、それが本当に気にならないくらい夢中になって読めました。

いろいろと考えさせられる作品でした。
べる
2008年07月29日 00:58
TBありがとうございました^^
ほんとに、ボリュームたっぷりでお腹いっぱいって感じです。私も夢中になって読みふけりました。バケネズミの正体は黒かったですね~^^;貴志さんらしい落とし所だなーと思いました。
すずな@主
2008年07月30日 14:14
>べるさん
上下巻ともボリュームがあって、読み応えがありましたね~!でも、そのボリュームに負けないくらい面白かったですね。
バケネズミの正体には驚かされたというか、げ;;;って感じでしたね^^;;;
2008年09月28日 21:10
こんばんは。
圧倒的な世界観の物語に惹き込まれて一気読みでした。なんか怖いものもありそうだけど、幸せそうじゃんと思った世界に隠れている(隠されている)いろんなことが明らかになってくると、やりきれなくってモヤモヤしてしまいました~。人間って救いようがないな…って思ったんですけど、そういう私も人間なんですよね。むむむ。
すずな@主
2008年09月29日 15:27
>エビノートさん
上下巻合わせて1000ページというのが気にならないくらいの吸引力のある世界でしたね~。
最初はファンタジーという感じで楽しんで読んでいたのに、だんだんと明らかになっていく”歪み”に、やりきれなさや憤りを感じていきました。
最後は憤慨しつつ、でも私も同じ人間でなんだと思い知らされたような気分にもなって、なんだかなーと考えちゃいますね^^;

この記事へのトラックバック

  • 【新世界より】上・下 貴志祐介 著

    Excerpt: 上下巻あわせて1,071頁、厚さ40cm [:びっくり:] 読みきれるのだろうか、という不安… 杞憂でした。 ずばり、面白い [:拍手:] 最初は和製「ハリーポッター」とか?と思っ.. Weblog: じゅずじの旦那 racked: 2008-06-09 18:26
  • 貴志祐介/「新世界より 上・下」/講談社刊

    Excerpt: 貴志祐介さんの「新世界より 上・下」。 千年後の日本、科学技術に代わり呪力で支配される社会で、子供たちは徹底的に管理されていた。 神栖66町に生まれた渡辺早季もその一人だった。管理された子供た.. Weblog: ミステリ読書録 racked: 2008-07-29 00:56
  • 新世界より 上・下 〔貴志 祐介〕

    Excerpt: ≪内容≫ ここは汚れなき理想郷のはずだった。 1000年後の日本。伝説。消える子供たち。 著者頂点をきわめる、3年半ぶり書き下ろし長編小説! 子供たちは、大人になるために「呪力」を手に.. Weblog: まったり読書日記 racked: 2008-09-28 20:55