ツバメ記念日 季節風*春(重松清)

短編集。3月~5月の”春”をテーマにした12編の物語。

3月の「ひなまつり」をテーマにした「めぐりびな」から始まって、つばめの巣を眺める5月まで。卒業、別れ、旅立ち、入学、新生活などが、家族の愛情を中心に温かく優しい春色で彩られながら紡がれていく。お雛様にまつわる母の思い出、ポンカンに込められた親の愛情、地元を離れ一人暮らしを始める不安と寂しさ、母を想うよもぎの香り、子供を亡くした親の悲しみと愛が込められたお地蔵さんと桜、育児に追われる夫婦が見つけたツバメに、それを語る父の娘への愛情溢れる手紙などなど。重松さんらしい、ぎゅーっとした切なさもあるものの、最後はどれもがほんわか春色の暖かさが包んでくれるお話ばかりでした。自然と優しい涙が流れて、笑みが浮かんできました。

どのお話も甲乙付け難いくらい好き。強いてあげるとすれば、「めぐりびな」「拝復、ポンカンにて」「よもぎ苦いか、しょっぱいか」「さくら地蔵」「ツバメ記念日」などの、家族や母への愛慕が溢れた作品がより好きだったかな。一番泣けたのは、タイトルにもなっている最後のお話「ツバメ記念日」。父から娘への手紙になっていて、その父の娘への、そして妻への愛情がいっぱいに溢れていて最後はぐちょぐちょになりながら読了しました。「さくら地蔵」も泣けた。本当にこんなお地蔵さんがあるのなら、是非とも会いに行きたいと思いました。

「よもぎ苦いか、しょっぱいか」では、読みながら母のおにぎりを思い出しちゃいました。小さい頃に握ってくれたのは、小さーい俵型のおにぎり。塩味が効いてて海苔がくるんと巻いてある。味付け海苔が小袋に5枚入りだった関係からか、一人5個ずつ。なので、子供用は小さーくて、大人用は大きい(笑)その頃の私は、おにぎりが大好物だったので(お手軽なお子ちゃまでした/笑)、これが食卓に並ぶとすっごく嬉しかったのを憶えています。あれから今まで、母の握ったおにぎりや、自分で握ったおにぎり、そして専門店で購入したおにぎりなど、沢山のおにぎりを食べたけれど、あの頃食べたおにぎりが一番美味しかったような気がする。気のせいなんだろうけどさ。だって、実家住まいで、元気に孫の相手をしている母に握ってもらうおにぎりなんて、今でも別に珍しいものじゃないしねぇ(笑)でも、米が違うのか、海苔が違うのか、塩が違うのか、はたまた愛情の量が違うのか・・・(笑)、それは分からないけれど、あの味は既に幻のものになっているような気がするな、やっぱり。だからこそ、このお話を読みながら、「もう一度、あのおにぎりを食べたいなぁ・・・」なんてことを、しみじみ思ちゃったんじゃないのかな、と思います。

この短編集は、タイトルから察するにあと夏・秋・冬の3冊が出版されるのかな。どんなお話が紡がれるのか、今からとても楽しみです。



**僕たちのミシシッピ・リバー 季節風*夏
**少しだけ欠けた月 季節風*秋
**サンタ・エクスプレス 季節風*冬



ツバメ記念日―季節風*春

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