セ・シ・ボン(平安寿子)

1979年、26歳でパリ留学した著者の留学エッセイ。

・・・平さんって、55歳だったのかっ!と、まずはその年齢に驚く。もう10歳くらいは若いと思ってました。
「パリへ留学」というと、華やかでキラキラ輝きを感じるけれど、どうもそんな感じではない。だいたい、55歳になるまで留学の話を人にしてなかったということからも窺える。そして、留学で、素晴しい体験をして、自分の人生が変わって・・・という話でもなかった。

仕事を辞め、貯金をはたき、日本から逃げるように3ヶ月のパリ留学。その理由は多く語られない。書けない色んな事情ってのがあったんだろうなぁ、と推察できるんだよね。そして、パリでの生活。ストレスがたまり、日本に帰って水炊きが食べたいと切望する。そんな留学もあるよな、たしかに、と妙に納得しちゃいました。何か強い目的があれば我慢も出来るけれど、言葉も分からない異国での暮らし。たった3ヶ月とはいえ、楽しいだけじゃないすまないよね。

そして、3ヶ月の留学から帰国して、フランス語学校のクラスメイトや下宿先の家族との交流も1,2度クリスマスカードを交わしたくらい。今、彼らが何処で何をやってるのかわからないし、そう知りたいとも思わないと書き綴る著者。それは、ちょっと寂しいんじゃないの・・・とも思うけれど、ストレスが溜まりまくった留学ならそうなのかもしれないなぁとかも思ったり。そういえば、私も社会人になってから大学の通信教育を受けたけれど、あの時知り合った人達とも、櫛の歯が抜けるように連絡を取り合わなくなった。・・・あぁ、そういうことか。

ということで、なんだかとってもリアリティのある留学エッセイでありました。

当時、留学したことを隠していた著者ではあるものの、今の土台になっているのは「あのパリ留学」と言い切る。その時はわからなかったことが、月日が経つにつれ色んな意味で輝き出してきたのだろうなぁ・・・。


セ・シ・ボン

この記事へのコメント

2008年06月15日 11:59
こんにちは。

あの平さんの、若き日の心のバックボ~ンが描かれていて印象的でした。
すずな@主
2008年06月15日 14:35
>くじらさん
平さんにしては(と、言っても小説から受ける印象だけですが^^;)、とっても意外な若き日の姿だな~と思いましたね。

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