RUN!RUN!RUN!(桂望実)

初読み作家さんです。なんとなーくタイトルに惹かれて、というか見覚えのあるタイトルだったんですね。なので手に取ってみました。たぶん、どこそこの読書ブログ様で目にしたのかなぁーと思いますが。

面白かったです。でも、なんだか”もう一歩”感も拭えないかなぁ。なんていうの?「惜しいっ」って感じです。この本の厚さにしては、ちょっと色々と詰め込み過ぎじゃないかなぁ、という印象。そこは、もうちょっと深く描いて欲しかったっていう気持ちの残る所がいくつかあります。

陸上選手として中高生時代から活躍し続けてきた主人公。大学の陸上部に入部するも、自分の才能に絶対の自信を持ち、仲間なんてとバカにする。オリンピックの金メダルを目標にしてるから、箱根駅伝も通過点。そんな主人公が知った、自分の体についての秘密・・・。

最初はね、才能に溺れた主人公がスランプに陥って・・・とか、怪我で・・・とか、そんな理由で挫折しそうになるんだけど、仲間の励ましによって「走るのが好き!」って気付いて、箱根駅伝を仲間の為に走る・・・とか、そんなお話だろうと思いながら読んでたんだよね。まぁ、よくある話かぁ;;;みたいな。ところが、お兄さんの突然の死に錯乱したお母さんの口から出た言葉に、「えぇっ、そっちの話なのっ!?」ってびっくり。おおよそのストーリーは想像してた通りだったんだけど、挫折というか走らなくなった理由がなかなか・・・。

お母さんの思いがけない言葉から、自分の出生の秘密に疑問を持ち不安を感じる主人公。それは今後の選手生命を脅かすもの、そして今までの自分の努力をも否定するものでもあった。そして、その疑問を完全に否定できなくて、理由を言えずに辞退した箱根駅伝。そのせいで、他部員のサポートに付くことになってしまう。最初は嫌々やっていたのが、その選手をサポートしていくうちに気持ちが少しずつ変化していく。自分ではどうしようもないことへの、やり場のない怒り、戸惑い、哀しみに襲われ、焦りながらもそこからなんとか前を見つめ進んでいこうとする姿勢。その様子を母親目線で読んでる私がおりました。気がついたら、息子の成長ぶり、気持ちの変化を、”心の奥でひっそりと”喜んでたよ(笑)

箱根駅伝の描写では、走る方よりもサポートの方に視点が置かれていて、そこも興味深かった。最後はね、主人公と一緒に自転車を漕いでたよ。もちろん、心の中でだけど。

ラスト部分が、さらっと描かれているだけだったんだけどね。そこら辺を、もう少し詳しく描いて欲しかったなぁ・・・。お兄さんの死の真相とか、真実が明らかにされた時の心情、周りの特に家族の反応などなど。一人の青年が、運命に翻弄されながらも走る喜びに目覚め、仲間の大切さを知っていく姿に拍手を送りたくなりましたが、ドーピング問題という重く大きい事柄にしては、それへの比重が少なかったような気がします。走ることの楽しさ、仲間の大切さを伝えたいのなら、ドーピング問題でDNAまで扱うには重すぎるし、大きすぎると思うし、ドーピングへの問題提起にDNAを扱うのなら、もう少し深く書き込んで欲しかった、と思わずにはいられません。お話自体は、すごく面白く読めただけに、そんな風に思えてしまうところがちょっと残念です。

RUN!RUN!RUN!

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  • Run!Run!Run! (文春文庫)

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