東京・地震・たんぽぽ(豊島ミホ)

東京で起こった大地震を題材にした14編の連作短編集。 このタイトルを見た時は、エッセイ集だと勘違いしてしまいましたよ~。だって、このタイトルってエッセイっぽくないですか?

東京に大地震が起こってからの数ヶ月間が、年齢や性別はもちろん、様々な境遇の人々を通して目の前に展開されていく。大学院の地学部に通う友人から「大地震が起こる」と聞いた男性が最初の主人公。その後、学校で被災した小学生、公園の東屋に生き埋めになった主婦、避難所生活を送る小学生や中学生、高層マンションの最上階に住むタレント、会社に残った家庭を持つサラリーマン、フリーター・・・。そして最後は、最初に登場した地学部の大学院生について語られる。

お話同士が、登場する人物達で繋がっているんだけど、そのびみょーな繋がり方が豊島さんらしいな~と思いました。「くやらみ」「夢を見ていた」のように対になっているものもあれば、どちらにもチラっと名前が出来てきただけっていうのもある。14編もの短編が収められているので、どのお話も短い。そして、最後まできっちりと描いてある訳ではなくって、どれもこれも「その後、どうなったの?」と思わずにはいられない。え?そこで終わるの!?ってのもあるし。読んだ人、それぞれが想像してくださいってことなのかなぁ・・・。これって、嬉しい結末を想像する人もいるだろうし、そうじゃない結末を想像しちゃう人もいるんだろうなぁ・・・。

豊島作品らしく、どのお話も「いい話」という訳ではなくって、そういうこともあるだろうな、あっただろうな、悲しいけどさ、というお話も混じっていました。私は、いわゆる「大地震」と呼ばれる程の大きな地震には遭遇したことがないので、想像することしか出来ないんだけど。でも、現実では”キレイゴト”ばっかりじゃなかっただろうと思うしね・・・。そういう意味でもリアル感みたいなものを感じました。まぁ、全部がそうだった訳ではなく、ちょっとシックリこないな~というお話もあったんだけどね。リアリティを感じられないっていうか、それはどうなの?って思っちゃったのとか・・・。

ほっとしたり、涙ぐんだり、悪態つきそうになったり、声援を送ったりと、さまざまなお話がありました。いろんな人がいて、いろんな被災がある。どんな人にも降りかかるのが”天災”なんだよな、ということを改めて感じた作品でした。大震災のことを描いているんだけど、”地震”ではなく”人”を描いてあるお話でもありました。

タイトルに付けられている”たんぽぽ”。”東京””地震”ときて次に”たんぽぽ”と付いているところに、著者の想いみたいなものを感じました。地面に這うように伸びる葉。春を告げる黄色い花。そして、飛び立つ白い綿毛。たんぽぽが、被災で大切な人を失ったりと辛いことがあっても、未来へ向かって頑張る人々の姿に重なりました。

東京・地震・たんぽぽ

この記事へのコメント

2007年10月23日 17:21
「ポロポロドール」を読んだ後だったので、物足りなさを感じました。もっと人物を絞って、その人を深く掘り下げて欲しかったです。少し散漫な感じを受けました。そんな中でも、自称DJのあんちゃんは良かった。豊島さんらしい好青年でした。
すずな@主
2007年10月24日 05:54
>しんちゃん
こういうショートショートで誰か一人を掘り下げるのはちょっと難しいでしょうね^^;たしかに、もう少し1本の話を長めにして誰かに絞って・・・というお話も読んでみたいですけどね。

私は、そろそろ豊島さんの”がっつり長編”を読んでみたいんですよねぇ・・・。
2007年10月25日 17:05
14人の気持ちが手にとるように伝わってきました。
リンクのつなげ方が豊島さんらしくて巧妙でしたね。
豊島さんの長編、そろそろ読んでみたくなりました。
すずな@主
2007年10月26日 14:34
>藍色さん
年齢・性別・職業もバラバラな14人が、どこかでちょっとずつ繋がっている。繋がっているけれど、それぞれの思いがあって、それぞれの「大地震」があるんだな~と感じさせられました。
豊島さんの長編、読んでみたいですねー!
2007年10月28日 19:56
こんばんは!
お返事が遅くなってしまい、すみません。
豊島さんらしいリンク、物語の苦さがありましたね。
私もそれぞれのその後を想像しちゃいましたが、彼らの未来が明るいものであると良いなぁと祈りたくなってしまいました。
特に、「くらやみ」の奥さん!
すずな@主
2007年10月29日 11:04
>エビノートさん
いえいえ、お気になさらずに。

優しいお話だけじゃないところが、豊島さんらしくって好きだな~と思っちゃいました。
私も「くらやみ」の奥さんのその後が気になります~。あの夫婦はどうなったんでしょうね・・・。

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