となり町戦争(三崎亜記)

怖かった。淡々と綴られる文章に、恐怖を感じる筈の無い文章に感じた恐怖。誰かに追いかけられるとか、殺されるとか、そういう恐怖ではなく、心に冷水をあびせられたような感じ・・・といえばいいのか。

最初はタイトル通り”となり町”とドンパチやるのかと思っていたんだよねー。そういうのをイメージしてたんで、戦争の影すら感じないストーリーにちょっと不満気味というか・・・。後で考えると、そう思った自分が怖いよ。「戦争をやっている」という現実感を感じないまま偵察員となった主人公の目線で語られるこのお話は、外国でやっている戦争をTVのニュースで見る私自身と重なる。日常を送る日々に戦争を感じることは一つもない。それでも、確実に人が死んでいる。そして、それを現実のものとして感じられない日々。本当に戦争は行われているのか?それはどんな戦争で、どうして戦争をしなければならないのか?戦争をして何が変わるのか?それが語られることは無い。誰も答えをくれない。訳も分からず戦争に参加させられて、それに不満や不安を感じることなく業務をこなす。突然追いかけられ、訳も分からず逃げ回る。人が殺されても、戦争だから「殺人」とは言わない。戦死者なのだ。

・・・そして、だんだんと主人公も分かってくる。現実に感じる。「戦争をやってるんだ。戦争とはこういうものなんだ。」私も主人公と一緒に感じる。
こういう言い方は不適切なのかもしれないけれど、こういう表現しか私には出来ないのでご了承いただきたい。この本を読んで、遠いかの国で行われている戦争をコンパクトにして突きつけられたような、そんな気がした。


となり町戦争

この記事へのコメント

あまね
2007年03月26日 23:59
気になるタイトルでした。すずなちゃんのレビューを読んで、読んでみました。
すずなちゃんの感想の通りでした。短い小説なんだけど、重苦しさが残ります。
すずな@主
2007年03月27日 12:25
うん。なかなか重かったね。
これ映画化なんだよね?
・・・この映画は観ない見ないだろうなぁ。
2007年08月31日 13:05
現実のものとして感じられないのに、起こっている戦争。
確実に人が死んでいることを知らされる怖さと静かさが伝わってきました。
不思議な印象を残す作品でした。
映画はきっと観ません。主演男優が江口洋介なのもイメージが違う気がします(笑)。
すずな@主
2007年08月31日 16:54
>藍色さん
静かな怖さを感じた作品で、そういう意味でも”不思議な印象を残す作品”というのはよく分かります。
江口さんの印象ではないですよねぇ、たしかに^^;

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